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2st、本体価格15万以下の原付一覧 KYMCO Sooner50Z 価格 \135,240 最高出力 4.6kW[6.29ps]/6,500rpm 乾燥重量 85.5kg 燃料タンク/オイルタンク容量 6.5L/ 1.1L ブレーキ (前)油圧式ディスク (後)ドラム タイヤサイズ (前)90/90-10 50J (後)100/80-10 53J http //www.kymco.co.jp/lineup/sooner50z.html LED付リアスポイラー付。 参考URL (リンク切れ可能制あり) http //www.apriliatokyo.com/kymco/KYMCOSOONER50RS.html 2009年2月2日 2stモデル5機種、販売終了のご案内 SUPER9S 50/Sooner50SS/Sooner50Z/VITALITY50/Looker50を在庫限りで日本国内の販売を終了とする。 ※販売終了モデルに関しまして、販売終了より5年間は部品の供給を致しております。 尚、特別な部品に関しましては、多少のお時間を頂く場合もございますので予めご了承下さい。 Sooner50SS 価格 \115,290 最高出力 4.6kW[6.29ps]/6,500rpm 乾燥重量 79.5kg 燃料タンク/オイルタンク容量 6.5L/ 1.1L ブレーキ 前:ドラム 後:ドラム タイヤサイズ (前)90/90-10 50J (後)100/80-10 53J http //www.kymco.co.jp/lineup/sooner50ss.html リアキャリア付 参考URL (リンク切れ可能制あり) http //www.apriliatokyo.com/kymco/KYMCOSOONER50S.html 2009年2月2日 2stモデル5機種、販売終了のご案内 SUPER9S 50/Sooner50SS/Sooner50Z/VITALITY50/Looker50を在庫限りで日本国内の販売を終了とする。 ※販売終了モデルに関しまして、販売終了より5年間は部品の供給を致しております。 尚、特別な部品に関しましては、多少のお時間を頂く場合もございますので予めご了承下さい。 SYM DD50 価格 \103,950 最高出力 3.7kW(5.0ps)/8000rpm 乾燥重量 80kg 燃料タンク/オイルタンク容量 5.1L/ 不明 ブレーキ 前:ディスク(径160mm)後:ドラム(径95mm) タイヤサイズ 前:3.00-10 42J 後:3.00-10 42J http //www.sym-jp.com/source/models/dd50.html LED付リアスポイラー付。 まもなく生産中止となる(H20.8.19現在) 参考URL リンク切れ可能性あり http //www.apriliatokyo.com/sym/symdd50.html YAMAHA BJ(Basic JOG) 価格 \112,350 最高出力 4.6kW[6.3PS]/7,000rpm 乾燥重量 71kg 燃料タンク/オイルタンク容量 4.6L/1.1L カタログ燃費 58.0km/l(30km/h定地走行テスト値) 燃料計、リアキャリア、フロントポケットが 標準装備されているため、価格の割にかなり豪華である。 ちなみに、JOGの名前が付くもののほぼ別物のため、 対応した社外部品があまり出ていないので改造したい人はJOGを薦める。 この車種に対するコメントをどうぞ。 名前 コメント すべてのコメントを見る 時速40km程度で走行すると、燃費35〜40km/Lぐらい -- (名無しさん) 2008-08-27 00 57 15 JOG/リモコンJOG 価格 \147,000/\157,500 最高出力 4.6kW[6.3PS]/7,000rpm 乾燥重量 69kg 燃料タンク/オイルタンク容量 5.7L/1.4L カタログ燃費 58.0km/l(30km/h定地走行テスト値) ディスクブレーキ装備車では最も安く、 サスの質が良いので同価格帯の中では最も乗り心地が良く加速性能も優れる。 現行2st車では最高のコストパフォーマンスを誇る。 この車種に対するコメントをどうぞ。 名前 コメント すべてのコメントを見る 部品 -- (名無しさん) 2008-07-27 13 30 54 ヤマハ原付の注意事項 台湾製の現行モデルでは環境性能を満たすため 触媒を装着しているので、時折アイドリングが不安定になったり エンストしたりする症状があるが問題はなし。 その代わりとして排ガス規制前のモデルに比べて燃費がかなり良くなっている模様。 触媒外すために規制前マフラーに交換すると性能うpとアイドリング安定の代償に燃費がガタ落ち。 SUZUKI レッツ2/2G 価格 \110,250/\122,850 特別色は+\4,200 最高出力 4.5kW[6.1PS]/6.500rpm 乾燥重量 67kg/68kg 燃料タンク/オイルタンク容量 5.3L/1.2L カタログ燃費 59.0km/l(30km/h定地走行テスト値) フロントポケットが標準装備で、2st廉価モデルの中では改造パーツが豊富。 2Gは盗難抑止効果のあるセンタースタンドロック及び燃料計を標準装備。 対抗車種のBJに馬力自体は僅かに劣るもののトルクが高いため、加速力に優れている。 唯一の欠点としてクランクが脆い傾向にあるので、走行距離が15,000km以上走っている場合 物によってはクランク内でベアリングが破損し異音が発生することがあります。 この車種に対するコメントをどうぞ。 名前 コメント すべてのコメントを見る 注意事項 JOG以外の廉価モデルはサスの性能上の問題で基本的に悪路に弱いです。 廉価モデル故に他車に比べて各部品の寿命が短い傾向があるので 中古は凄まじくオススメできません。
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__ __) ノ___人 rrー‐ァ'´ ̄\_ _ ヘ、. ___}⊥//⌒ト、  ̄ ̄ ̄\ く このジョルノ・. / ̄ \{ { } } }ー一'⌒\ ヽ} | i⌒ヽ \ ̄ / ̄\___ \ | ジョバァーナには | 乂,ノ / ̄ ̄/二ソ }=ミv―く〔 人___/l //r弋抜 \{ /ヽ | _「L「廴_ |ミ} ̄| __\ ー冖^ | ^ソ} |\_ └コ ロ 匸 \___|レ'´x伐} } | lo__ノ ノ \_r―、 __|_ロ__ロ_」_ \宀^| ┐ l | ∨ハ_}Т__ ヽ しク n n__] ヽ `ー'__ -- / / /∧ \_) } └ワ り/. }\ └‐' ,ノ / / /∧∧\__/ └し' がある. \\  ̄ _/ / // /∨ \_ ___  ̄\__ ィ〔/ / //⌒V} / ̄  ̄/ ,ハ {\j_/ │ l{ し' }// / / l /\ \ | 乂__,ノ / / | _/ovハObo(‐ |_/O。、 / / | / rd'´ /  ̄マd / / |. / B{ / }8} { / 〈 | B{ { ノO} _ ̄ ̄ヽ { } ヽ 0o。 __,ムィfく (_)ヽ\ }__j/ / / ィ丕ヽ 8}二二二ヽ,ノO / / \}l| Y / / ,イ. |┼(}} ノ」 ,ィフOムf´() /(_) (// \ {_/ / {. [)|()リ | [ // { { // /{ / / 「 \/ ] |// 乂し_/ / │ // | | j |/ /  ̄「 / l // | | ∧} / / j__/ | | / | | 〈∨ // / │ | (/{ | | (巴)) / / | | / | | ∨ / ヽ / / | | }} / / ___/ / } | / j「 {/ / ̄ ̄ ̄ | / | / ノ / ___/{ / │ / {_ | /∠⌒ヽ/ / //____/ ハ__,ノv' __/ |. / (/ ̄(_フ / 〈〈____/ { // __ ] |. / {/(_)/ /  ̄\ ̄\_ ∨ ∧ ___/(/{ / /|「 〈〈\ \ ヽ〉 }〈  ̄/ / / //|| } }  ̄ ヽ〈 ) ) / 名前:ジョルノ・ジョバァーナ 性別:男 原作:ジョジョの奇妙な冒険 一人称:僕 二人称:あなた 口調:少年的/丁寧語 AA:ジョジョの奇妙な冒険/5部 黄金の風/ジョルノ・ジョバァーナ.mlt Part5のジョジョ。イタリア在住の15歳。 Part3で空条承太郎に倒された邪悪の化身DIO(ジョナサン・ジョースターの胴体を奪ったディオ・ブランドー)の遺児。 街の浄化(*1)と、幼い頃に出会った男へのあこがれから ギャングスターになるという夢のために、ギャング組織に入団した。 勇敢で理知的。ギャングということもあり、敵や悪人には容赦しない。 物体に生命を与えるスタンド「ゴールド・エクスペリエンス」をもつ。 戦闘をこなす他、チームの作戦立案やスタンドでの補助・治癒なども担当する。 特徴的な3連環の前髪は、ファンから「コロネ」と呼ばれる。 父DIOとの関係は、二次創作ややる夫スレにおいてはさまざまに描かれている。 キャラ紹介 やる夫Wiki Wikipedia MUGENWiki アニヲタWiki ニコ百 ピクペ 登場作品リスト タイトル 原作 役柄 頻度 リンク 備考 あなたはHUNTERになるようです HUNTER×HUNTER ハンター受験者 主 まとめ あんこ エター 仮面ライダーGER 仮面ライダー 仮面ライダー志望のギャング 主 まとめ 完結 君は、崩壊した世界を歩く オリジナル 生き残りの1人 常 スレ R-18 安価あんこ 完結 ブランドー家の奇妙で平凡な日常 ジョジョの奇妙な冒険 DIOの息子で長男。カップリングは黒こなた(コロネ) 常 まとめ 完結 やる夫で戦うドラクエ6 ドラゴンクエスト6 チャモロ役。「ゲントの杖」ゴールドEで回復担当 常 まとめ 完結 キル穂は破壊神のようです。 勇者のくせになまいきだ ニート魔王DIOの息子 準 まとめ R-18 完結 こちらアメリカは西海岸、片田舎の日本料理屋の「日常」でございます オリジナル ジョセフの子供の1人 準 登場回 rss できる夫は吸血屋で! オリジナル DIOの息子で、パッショーネのボス 準 まとめ 完結 やる夫達は高校生活を満喫するようです オリジナル 中学生でギャングのボス。父DIOは働かない 準 まとめ 完結 エドの引き鉄 -EDO no TRIGGER- クロノ・トリガー ガルディア共和国の若き大統領 脇 まとめ やる夫Wiki 完結 俗物なフリーザ様が宋江になるようです 水滸伝 方蝋の大太子、方天定役 脇 まとめ 予備やる夫Wiki R-18G あんこ 完結 ティルは姉に認めてもらいたいようです ポケダンシリーズ 盗賊団ギラグールの新入りのレディアン。姿はゴールド・エクスペリエンス 脇 まとめ 完結 天聖 -Reincarnation- オリジナル 冒険者候補の1人 脇 まとめ 予備 R-18 完結 やる夫はローゼンさん家の家政夫になるようです オリジナル 薔薇水晶の弟。両親はDIOと竜宮レナ 脇 まとめ 完結 短編 タイトル 原作 役柄 リンク 備考
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_,ヘ(ー、ー、ー、_ ,γ` ,rfヘ iヾ、 ー=ミ、_ 、⌒ヽ、 ; i! V ;ト 辷__ ヽ ヾヽ li Y V N ヾ、V´ z..、ヾi! リ( j .ヘ ト、\ { ! (i、 リ γ ⌒ヽ γ⌒ヽ r、 N ゝ´ゝ.__ ,.イ i. .ハ.Y 〃. .! i ヘ .l!Y ヘ ! ゞイ_リ j ゞイ .ノ ! ) W| ≧ニヽ、 ≧rー-≦ニー ゚ 、. '涖テミ` u ≧=、___\_ ーイ . ´¨ ´ イ ,. 、_ ⌒ヽ i i. . . .!  ̄≧--- ⌒УイヘNヘ 、 _.ノ ノ i ┴ /iニニハ、ヾ.、 ー`-, ..′¨´` 7 / リニニ! Yハヾ .、  ̄/ニヘ,_ / . ト、ニニニ!YG ) i¨. .1/YニYニニニ、..ニニニ!ニニニ≧=ニ j l !ゝ=、ニニニ、jニニニニ{ニニ斗′ ` ′ ⅵニニYニニフヘニニ8{ . リニニ |≧=ニ二ニニマ厶≧=-、 ; , zタニニ|ニニニニ i ─────────────────────────────────────────────── 【ジョルノ】:職業……というか、役目はこの【不思議なダンジョン】の管理でしょうか。─────────────────────────────────────────────── 【ジョルノ・ジョバァーナ】 【不思議なダンジョン】 で出会った青年。理由は不明だが、始まりと終わりを失っているらしい。 【不思議なダンジョン】内で案内人をやっている。灯の料理で起きたイレギュラーに少し戸惑っている。 『現在』のやる夫が訪れる前に、『未来』のやる夫と出会っており、その際、色々と聞いたらしい。 DIOと同じ人型の魔法――スタンドを持っている。DIOの名前を知らないらしいが、名前を聞くと、吐き気を催すらしい。 【不思議なダンジョン】 時間、そして世界の壁を越えて存在する迷宮。【黄金の意思】を持つ方の為に存在する場所らしい。何時、どこに入り口が生まれるか不明。 日々、再構築されており、階層が幾つになるかランダムらしい。 【ヴォルデモートダンジョン】は、ヴォルデモートが100年ほど前に訪れたあと、此処での経験を元に、独学で生み出した場所。
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あ、ありのまま起こった事を説明するわッ。 召喚した亀を使い魔にしたと思っていたら、突然亀の中の人が「ご主人様の使い魔だなんていってたが、スマン。ありゃ嘘だった」的な事を言った… な、何を言ってるかわからないと思うけど、私にも何が起こっているのかわからなかった…いいえ、わかりたくなかった! 召喚した亀に飼い主がいてしかもちい姉さまの恩人だったとか、召喚には成功したけど異世界から来た平民だったとかそんなチャチなものじゃあないわ! 困ったとか…理想と違ってがっかりとか、そんなことじゃあない。もっと恐ろしい、もっと汚らわしい裏切りを受けた気分だわ! オールド・オスマン学院長らへフーケ捕縛の報告を終えたルイズ達は、見慣れない部屋にいた。 ルイズの使い魔だと思っていた亀の中、カメナレフの「事情を説明するから鍵に触れてくれ」という言葉に従って入ることができた部屋は細かいところで、奇妙だった。 彼女らが普段使う蝋燭や魔法仕掛けのランプなどの光とは違う蛍光灯の光。 それ一つとっても既に明るすぎたし、内装も貴族として教育を受けてきたルイズ達は異質なものだという事にすぐに気付いた。 見慣れない様式の家具。変な長方形の真っ黒い板、金属製の箱からは聞いた事の無い曲が流れ、そして柔らかそうなソファには壮年のこれまた奇妙な頭の男性が腰掛けている。 服装なども色々とおかしくて、ルイズ達を戸惑わせる。 眼帯をつけ、両足は膝から下が義足。腕も片方が人工物だった。 「貴方が…」 当事者でないからか、いち早く我に返ったキュルケが尋ねると、ポルナレフはばつが悪そうな表情で頷いた。 「うむ…私がお前達がカメナレフと呼んでいたものの正体だ。亀じゃあないし、名前も本当はジャン・ピエール・ポルナレフと「ふざけないでッ!」 説明に耐え切れずにルイズは叫んだ。 「ルイズ…」 心配そうに名前を呼ばれ、ルイズはよりヒステリックな声をあげる。 キュルケの心配する態度が耐えられなかった。まだ部屋の様子を見てからいつも通り本を読み始めたタバサの方が好ましい。 他の貴族から、”自分の使い魔に実は中の人がいた”なんてことで同情されるなんて…正面からゼロと嘲笑われるより、深く侮辱されたように感じた。 …ルイズは敵にでも向けるような目をしてポルナレフを否定する。 「私が召喚したのはこの亀よッ! アンタなんかじゃあないわ! 契約だってできたんだから…!」 「すまねぇが、それも勘違いだ」 頭の後ろをかきながら言うと、突然空中に炎が生み出される。 熱く、自然の法則など無視してもあがるルイズ達には見えないマジシャンズ・レッドの炎は、ポルナレフの意思によって蠢き、ポルナレフが用意したとっておきの肉を焼く。 ポルナレフ達が入っている亀の手に刻まれたルーンと同じ紋様が、一瞬で刻まれる。 見たことが無いルーンだと教師のコルベールが騒ぎ、オールド・オスマンにはちょっと汚い字ですが、ガンダールヴだと…隠れて騒いでいたルーンが刻み込まれ、ルイズは声もでなかった。 「契約の事は知ってたからな…マジシャンズ・レッドを使って、契約すると同時に亀の手に焼きこんだ」 「…そんな」 キュルケがアチャーっと顔を手で覆うのを見て、ポルナレフは辛そうな顔をする。 仕方なかったとはいえ、真実を告げられたルイズの体から、少しずつ力が抜けていくのを見るのがポルナレフにはとても辛かった。 「私にも、やる事があるからな。見ず知らずのメイジの使い魔になるわけにはいかなかったんだ」 「それなら、どうして使い魔のふりなんてしたのよ…! アンタなんて呼んでないわ! 私が召喚したのは、強くて美しい使い魔よ!」 自分を責める言葉に流石にその方が都合が良かったからだとは返せないポルナレフは苦しげな顔で、「突然呼ばれて、咄嗟にできたのはそれだけだった」と答えた。 ルイズは悔しげに顔を歪めて、ポルナレフに詰め寄る。何かに気付いてルイズは叫んだ。 「そうよ! 私は亀だけを呼んだのに、どうしてアンタなんかが一緒についてきたのよ!? 亀が召喚されて使い魔にされたってアンタには関係ないじゃない!」 その言葉にポルナレフは深く傷ついた表情をして、キュルケにちょっといいかもと思わせたが… もっとショックを受けたルイズはそれに気付く事はなかった。 「仕方ないだろ、私は死んでるんだからな」 「はぁッ? 私を馬鹿にしてるの!?」 屈辱に震えるルイズに、ポルナレフは慌てて手を振り回し、自分の真剣さを必死に伝えようとする。 死んでいる、という言葉を聞いて、タバサがビクッと震えたことには誰も気付かなかった。 「この亀の能力は今体験してるだろ? 昔ちょっとしたことがあって死んだ私は、その能力でこの亀の中に留まる幽霊なんだよ。だからコイツを使い魔にさせるわけには」 ポルナレフは最後まで言う事が出来なかった。 飛び上がったルイズの手がポルナレフの頬を叩いた。 痛みは差ほどでもない。悪いビンタだったが、ショックは大きかった。 確かに、ポルナレフにしてみればルイズは、どうでもいい存在だった。 ルイズの気に入らない点は多々ある。だが、曲がりなりにも使い魔として何日も寝食を共にするうちに少なからず情が沸いていたのだ。 ビンタを受けてショックを受ける自分に、ポルナレフも驚いていた。 幽霊に触れるとは思っていないルイズはまたポルナレフが嘘をついたと思って、より表情を険しくした。 (デッドマンQと6部等を読みながら考えたんだけど亀の中だから触れるってことにしました…) 「そんなことあるわけないでしょ…! 本当の事を言いなさいよ!」 「本当だって言ってるだろうがッ、少しは私の言う事をだな…!」 「亀の次は幽霊だなんて、信じられるわけないでしょ!」 だったら、と自分の腕をポルナレフはナイフで切ってみせる。 見事なナイフ裁きに驚くルイズ達だったが、切り裂かれてパックリ開いた傷口からは一滴の血も流れない…タバサが心なしか顔を青ざめさせ、ポルナレフから距離をとった。 「どうだ! 私の体はもう血も流れてねーし、痛みも余り感じねー! 正真正銘の生霊なんだよ」 傷口を見せて叫ぶポルナレフから、タバサは逃げ出した。 だがタバサは回りこまれたッ。 「タバサッ、待って。二人を止めるのを手伝ってよ!」 「いや…」 立ちふさがるキュルケに微かに青白くなった顔を横に振り、タバサは努めて冷静な振りをして入ってきた亀の天井へとレビテーションで突っ込んでいく。 てっきりなんだかんだといいつつ手伝ってくれると思っていたキュルケはタバサのそんな態度を訝しんだ。 「もうタバサったら…どうしたのかしら?」 どうでも良さそうな態度でタバサが亀の中から逃げ出す間にも、二人は言い争う。 脱線してしまったが、問題はそこではないのだ。 ルイズにとって、初めて成功したと思っていた魔法が、それを証明する存在が、実はそうではなかったということが、重要だった… 「もういいわ…あんたなんて、アンタなんて伯爵様の所にさっさと戻っちゃえばいいのよ!」 ルイズがそう吐き捨てた頃、ジョルノはオールド・オスマンに事情を伝え、二つのことを認めさせていた。 あくまてルイズが承諾するという条件でだが、カメナレフの返却。 そして、再び使い魔を召喚する許可を… * 「今夜はせっかくの『フリッグの舞踏会』じゃというのに、頭が痛いのぉ…」 色々とありすぎたとオールド・オスマンは深くため息をつく。 恩人の形見である円盤が戻ってこなかったのは真に惜しいが、それについては諦めがつく。 忙しいからという理由で自分で取り戻しに行くどころか教え子に奪還を命じたのはほかならぬオールド・オスマンなのだ。 しかも相手は名の知れた『土くれのフーケ』。教え子達がそれを大きな怪我もなく、皆揃ってフーケを捕らえて帰還しただけでも満足だった。 その一人が、円盤を落としてしまったと責任を感じているとあれば、尚更だった。 その責任を感じ、自分を責めていたルイズに再召喚をさせることを条件付とはいえ認めさせられたことを思い出して、オスマンはまたため息をついた。 同席を許された少し見事に頭が輝く教師コルベールも重々しく頷き同意する。 「全くです。よもや」 「それとなくあの子の胸が本物かどうか尋ねただけで何もあんなに…」 「いえ、あれはストレートすぎましたぞ」 「そうかのお…わしのモグソートニルも踏み潰されかかったしのお…」 ちょっと連れの女の子の胸を凝視して使い魔のモグソートニルにスカートの下に走らせただけだった。 ほんの、ちょっとした冗談。スキンシップだったのにネアポリス伯爵と名乗った少年がいたいけなネズミを踏み潰そうとした光景を思い出し、オールド・オスマンは残念そうに使い魔であるネズミを撫でる。 「死んだ方がいいのでは?」 コルベールがぼそっと言う。 久しぶりに聞いた炎蛇全盛期の冷たい声に、オールド・オスマンは部屋の雰囲気を取り戻そうと咳払いをする。 無駄な足掻きだが、オールド・オスマンは冷たい空気を無視して本題に戻る。 「ネアポリス伯の説明では使い魔の儀式は完了していない。ということじゃったが、まずはその事について確かめてもらえんかの?」 「わかりました…しかし、私は正直気が重いです。あれほど熱心な生徒が、初めて魔法に成功した結果」 表情を曇らせて心情を吐露するコルベールをオールド・オスマンは首を振って止めさせた。 「申し訳ありません。もし本当だった場合は、今度こそミス・ヴァリエールの召喚の儀式を完了させてみせます。それでは、失礼します」 大げさに意気込んでからコルベールは退室していった。 使い魔のモグソートニルがオールド・オスマンを見上げる。 長年一緒に過ごしてきた使い魔が自分を気遣っていることに気付き、オールド・オスマンはその頭を撫でてやる。 ルイズが魔法に懸ける熱意はオールド・オスマンも良く知っていた。 貴族としての格で言えば最上位に当たるヴァリエール家の三女であるルイズは注目を集めずにはいられなかった。 しかも魔法がまったく使えない。 実の事をいうと進級させるかどうか、使い魔召喚の儀式に参加させるかどうかという所で、オールド・オスマンは判断を迫られた。 何も皆が使い魔召喚を成功させる傍らで何度も何度も爆発を起こし、力尽きるまで失敗させるのは残酷だと言うのだ。 コレまでは何もなかったし、その気は今後も無いだろうが、ヴァリエール家から何か言ってくるのではないかと危惧する者もいた。 …だがオールド・オスマンは少なくない反対を押し切って、召喚は成功した。 そしてその使い魔と共にフーケを捕らえるという手柄を立てた。 だというのに、その使い魔の飼い主が現れ契約は完了していないなどと…始祖ブリミルも酷い事をなさるとオールド・オスマンはもう一度深くため息をついた。 今度ルイズの母が訪ねてくると面会した折にジョルノから聞かされてもおり、オールド・オスマンの悩みは尽きなかった。 一方彼らの頭を悩ませる原因を作ったネアポリス伯爵、髪を黒く染め髪形をかえてシャツを着替えたジョルノは、ポルナレフを探しいこうとしていた。 ポルナレフの意向を聞いておきたかったし、(聞いたから絶対にそれにそった行動をしていくとは限らないが)テファを説得しなければならない。 それに当たって、ポルナレフに少し相談しておきたかった… その為学院にたどり着いたものの国に戻る事になったイザベラや、テファとは一旦別れておりフードを被ったエロタウ…ミノタウロスのラルカスだけを伴っている。 2mを楽に越える大男を連れて、ジョルノは階段を下りていく。 階段を降りきって、その足は人の多そうな場所へと向かっていた。 そこで適当に生徒を捕まえて亀の場所かルイズの居場所を尋ねれば見つけられるだろうという算段だった。 「ご主人様一つ頼みがあるんだが…」 「なんです?」 亜人の使い魔ということにしているので自分をご主人様と呼ぶラルカスに目を向ける。 すると…探すまでもなくジョルノの視界に気弱そうな女生徒が一人目に入った。 「実は今日の為にフェイスチェンジを覚えてみたんだ。ほら、イケ面に化ければ今夜の舞踏会で一夜のロマンスを体験できるだろ?」 はにかむ牛の顔を余り見ないようにしながらジョルノは少し考え、仕事ではかなり精力的に働いていることもわかっていたので許可を出す事にした。 「…構いませんが、羽目を外し過ぎないようにお願いしますよ」 「理解してるぜ。おっと、あの亀野郎のことをあの女生徒に聞いてましょう。ちょっとボ「シッ…人目を気にしてください」OK」 浮かれるラルカスを咎めて、ジョルノは誰かを待っているらしいその女生徒に話しかける。 ダンスのステップを芝生に刻みながら後ろを付いてくるラルカスの事は気にしないことにした。 「お嬢さん、少しお尋ねしてもよろしいですか?」 「え? あ、はい…なんでしょうか?」 年齢的にはそう換わらないようにも見えるが、服装から生徒ではないと悟ったらしく女生徒は少し緊張した様子で振り向く。 初々しい仕草に、ラルカスが少し顔を綻ばせる。ジョルノは紳士的に、昨日覚えたばかりのトリスティン式の礼をする。 「ルイズ・フランソワーズという女生徒を探しているのですが、もし知っていたら教えていただけませんか? 彼女の使い魔でもかまいません」 「ルイズ…ああ、『ゼロ』の! 確か彼女なら女子寮に向かうのを見ましたわ。彼女の使い魔なら、あちらに…多分、食堂の裏で他の使い魔達とたむろっていると思いますわ」 女生徒は言いながらその場所を指し示し、ジョルノはそれを覚えて礼を言う。 妙に詳しい説明にラルカスは眉を顰めたが何も言わずに置いた。今夜の舞踏会に着ていく服のコーディネートで頭が一杯だったわけではない。 「ありがとう、助かりました。申し遅れましたが私ネアポリス伯爵と申します、この礼は後ほどまた改めてさせていただきます」 「ネアポリス伯!?」 他国人でありながら急速にトリスティンでも名が売れたゲルマニア貴族と知り、女生徒は驚く素振りをみせ去ろうとするジョルノを呼び止めた。 「お待ちください! でしたら、一つお願いがございます…」 「なんでしょうか? 私のできる範囲であれば協力させていただきますが」 なんとなくこうなるだろうなと思っていたジョルノは、特に迷う素振りもなく聞き返す。 女生徒は喜色満面にネアポリス伯にお願いする。 「実は…ある出来事からお友達を一人傷つけてしまったんです。それ以来彼女は余り授業にも顔を出さず…」 憂いを顔に浮かべて、女生徒はジョルノに体を寄せた。 自分の魅力を、それなりに理解しているのだなとジョルノは感じた。 「伯爵様、お願いでございます。彼女を励ましてあげていただけないでしょうか? 貴方に励ましていただければ、きっと彼女も…!」 「私はそういうことは余り得意ではありません。ましてや面識のない方とは」 謙遜するように言ってジョルノは首を横に振る。だが、女生徒は引き下がる気はないらしく、ジョルノとの距離をまた縮めた。 断るような態度を見せてからジョルノはですが、と諦める様子の無い女生徒に言う。 「そうですね…貴方の方がよくその方のことがわかるでしょうし」 「え?」 「今夜の舞踏会の相手にお誘いするのを名目にして、励ます内容の手紙を代筆していただけませんか? プレゼントと一緒にお送りしてみましょう。今からでは大したものは用意できませんが、花とアクセサリーの一つ位は用意して見せますから」 「あ、ありがとうございます。すぐに用意しますわ!」 言うなり女生徒は体を離し、簡単に手紙の受け渡しなどの約束をしてジョルノに一礼する。 ここにおりますので、といい手紙を用意し始める彼女の準備の良さにジョルノ達はちょっぴり感心した。 「今夜が楽しみになりましたわ。貴方様とミス・モンモランシのダンス、楽しみにしております」 ケティ・ド・ラ・ロッタと名乗るその女生徒と別れ、ポルナレフの元へとジョルノ達は歩いていく。 もう相手が見つかっていいなぁと羨ましそうにするラルカスに、ジョルノは苦笑した。 完全にケティと離れてから、ジョルノは言う。 「彼女は多分、僕を待っていたんだと思います」 「あん? ご主人様が誰かわかってたとか言うんじゃないでしょうな?」 「誰でもいいのかも…僕以外にも声をかけているのかもしれない」 証拠があるわけではなかったので、ラルカスは窺った見方だと笑い飛ばしジョルノの先を歩き出す。 食堂はすぐそこだ。そこにポルナレフがいる…大声で何か愚痴っているのが、ジョルノ達の所まで聞こえていた。 「でも、良かったのか? テファと踊ったりするのが先でしょうが」 「彼女をギャングの世界に関わらせる気はありません」 ラルカスは鼻で笑った。 ジョルノの言う事でも、今回ばかりは本気とは思えなかったのだ。 それに、烈風を始め、ジョルノ達の組織に敵対する動きが強く、纏まりを見せ持ち始めているような印象もラルカスは受けていた。 「もう遅いだろう。今更距離を置いても逆に危険じゃあないのか?」 「ゲルマニアならどうとでもなりますし、もうすぐロマリアの枢機卿様のお許しを買う算段もつきますしね」 「…聖職者を買収したのか?」 「高くつきましたが…ロマリアが最も腐っている」 言うと、ジョルノは珍しくため息をついた。 始めてみるジョルノの表情を、ラルカスは年相応だと感じて何故か可笑しくなった。 「既に僕が他の女性に手を出していると聞けば、彼女の熱病も少しは冷めるでしょう」 「どうかな?」 甘いなと言いたげにニヒルな笑みを浮かべる牛男を追い抜き、ポルナレフの元に向かった。 ジョルノ達が行くと、沈んだ空気を垂れ流す亀の中にワインの瓶が次々運び困れていく所だった。 気遣わしげな表情を浮かべながら、亀にワインを入れていくメイドを押しのけ、ジョルノは亀を取り上げて人目につかない場所へと連行した。 「ウォッ、なんだ…!?」 驚きながらマジシャンズレッドが亀から顔を出す。 ジョルノはゴールドエクスペリエンスで、マジシャンズ・レッドを押さえつけて中に入る。 精神的に深手を負ったマジシャンズ・レッドの力は弱く、グングン押し込み、ついには亀の中へと逆戻りさせることにさえあっさり成功する。 拍子抜けしたジョルノはソファに腰掛けてワインを煽っているポルナレフに尋ねた。 「何やってんです?」 「俺は、ダメな大人だ。ルイズを傷つけちまった…」 「そんなにルイズが気に入ってたんですか?」 「いやそういうわけじゃあねぇんだが…」 眉を顰めるジョルノに、ポルナレフのはっきりしない返事が返される。 ゴールド・エクスペリエンスの視界には、項垂れたままワインを煽るポルナレフの姿が見えていた。 部屋も薄暗く、テレビには『ぼのぼの』が仕舞っちゃう叔父さんに仕舞われる映像が流れている。 人気の無いところにたどり着いたジョルノは亀の中に入る。 ゴールド・エクスペリエンスで見た光景より、かなり情けない顔をしたポルナレフがジョルノを見上げていた。 何も言わずにジョルノはその隣に腰掛ける。 人が来ないように、見張りをラルカスに任せたジョルノはポルナレフと今までのことを語り合う。 ポルナレフの、主人になったルイズとの余り良くない状況にジョルノはちょっとだけ同情するような目をした。 今回ばかりはポルナレフに同情の余地がある。同じくテファに召喚されたジョルノからすれば、良くそんな主人で我慢できたなとも思ったが。 そしてジョルノの話に、ポルナレフはジョルノを2,3発殴りたくなったが、グッと我慢して同情するような態度を示した。 美少女侍らせた挙句お前とはもういられないとかお前は俺を敵に回したいのかと、問い詰めたかった…だが大人としてグッと堪えた。 「ルイズですが、もしかしたら彼女は…」 ジョルノはルイズがテファと同じ系統のメイジではないかと疑っていた。 旅の間も少し調べてみたが、使い魔に人間を呼ぶこと自体、前例が見つからないからだが… ポルナレフは聞きたくないと腕を振るって制止する。 「いや…悪いが、これは俺の問題だ。お前には悪いが、待っちゃくれねぇか?」 「…わかりました。もう少しそちらは様子を見ましょう」 ジョルノの返事にポルナレフは笑顔を見せて、(ポルナレフ的には)兄貴分としてまだ高校にも入ってないジョルノが珍しくしてきた相談に乗ってやる事にする。 こっちは当事者ではないのでルイズとのことよりは気楽にワインを楽しみながら答えることが出来る。 考えて三秒、すぐに言い案が浮かんだ。 「そうだッ! さっき言ってた話だが、どうせならはっきり言った方がいいぜ」 気楽に言うポルナレフの態度には真剣に考えているのか疑わしさがあったが、こんな事で冗談を言うような男でも、多分、きっとないのでジョルノはアドバイスを聴いてみることにした。 薄く笑みを浮かべて、ジョルノもポルナレフから少しワインを分けてもらう。 名門貴族も通う学校で出されるワインだけあって、とても良い香りが口の中に広がった。 「…つまり新しい女が出来て誤解されたら嫌だからさっさと荷物を纏めろと言えばいいんですね?」 「いや、ちょ…まてお前、それは幾らなんでも酷いだろ!?」 かなり引き気味なポルナレフにジョルノは不思議そうな顔をした。 「そういうことではないんですか?」 「違うッ! もう少し彼女を傷つけないような方向で上手く言うんだよ!」 「そうですね…善処します」 舞踏会が始まってから言うか始まる前に言うか、その程度の事で大きく変わるとも思えなかったし、ジョルノはテファの元へと向かった。 ポルナレフが頑張れよと背中に声をかけたが、ジョルノは返さずに亀から出る。 人の目はない…ジョルノは学院長室のある塔を見た。 テファは、まだそこにいるはずだった。 何も言わずに歩き出すジョルノの後を、ラルカスが追いかけてくる。 「ラルカス、貴方も舞踏会の準備があるでしょうから自由行動してもらっても構いません」 「お、そうですか? じゃあさっきのミス・ツェルプストーに声をかけてみることにしよう…!」 許しが出た途端180度進む向きを変えるラルカスを笑って、ジョルノは亀を片手にテファの元へ行く。 「ああそうだ。ご主人様、ミス・タバサの件だが、彼女の使い魔にアンタが断った理由を説明しておきました」 「助かります」 シルフィードでは余り期待できそうに無いが、と思いながら礼を言って、今度こそラルカスとジョルノは分かれた。 そして、芝生に座るケティから手紙を受け取って、ジョルノ達が学院長と面会する前に宛がわれた客室に戻る。 テファは、今夜舞踏会があるというのにまだ何の準備もせずベッドに腰掛けてジョルノを待っていた。 ジョルノが入った途端俯いていた顔を上げて、ジョルノを見る目は一歩も引かないとジョルノに彼女の心情を伝えて来る。 一筋縄ではいかないようだとジョルノは感じたが、臆さずテファとの距離を詰めていった。 テファが口を開く…ジョルノはそれに被せるように声を出した。 「テファ、まだ準備をしていなかったんですか? 明日には貴方はゲルマニアに向かうんですから、ラルカス程とは言いませんが今夜は楽しまないと損ですよ」 そう言って用意しておいたドレスなどを荷物から出すジョルノにテファははっきりと言う。 ベッドの上に広げた布地をテファの指が押さえつけた。細い指が握りこまれ、皺を作っていく。 「私はいかないわ。ジョルノとまだ旅をするの」 「ダメです。何度も言わせないでください。僕は「私も何度も言いたくない。どうしたら私を連れていってくれるの?」ありません。そんなことは…」 ジョルノも始めてみせる剣幕で詰め寄ってくるテファにはっきりと告げる。 だが、テファは怯まなかった。 「私が、姉さんを助けるわ」 一瞬、何を言ったのかジョルノは理解するのを拒否した。 だが、テファは大きすぎる胸に手を当て、ジョルノに言う。 「それが成功したら、私を貴方の組織に入団させて欲しいの」 「駄目です。場合によっては警備の人を殺さなければならないんですよ? 貴方にその覚悟があると「きっと、姉さんとゲルマニアに行っても戦争が終った後アルビオンに帰っても、昔みたいにはもう暮らせないわ」 ジョルノがポルナレフと会いに言っている間…いや、オールド・オスマンと会っていた時もテファはずっと考えていた。 旅をして、エルフということがばれてしまうとどれだけ危険か、少しは理解できた。 ここでジョルノに頼んで姉のマチルダを助けてもらい、ジョルノが用意したゲルマニアの屋敷で静かに暮らす。 そんなことでまたジョルノが来る前のように暮らせるのか自問してみた…使い魔は、召喚したメイジにとって必要な者が呼びだされると姉は言っていたが、それは当たっているようだった。 「危険だってことはわかるけど…今の私が安心できるのはジョルノの隣だけだわ。私は、貴方が」 「テファ、それは風邪のようなものです。貴方は冷静じゃあない…」 切なげな目で言うテファに、ジョルノは険しい表情をして切り捨てた。 動揺して、テファの目が見開かれるのを見ながら、辛辣な口調で続ける。 「そんな考えは一晩寝て、少し頭を冷やせば考えなおせますよ」 「おいジョルノテメェ! もう少し言い方があるだろうが!?」 「カメナレフさんは黙っててください」 素っ気無い態度を装い、ジョルノは懐から先程ケティに書かせた手紙を取り出す。 もしかしたら、それの中身は熱烈なラブレターとかになっているのかもしれないが、確認する気はなかった。 「可愛らしい人を見かけたので今夜お誘いするつもりなんです。貴方も馬鹿な事は考えずに今夜の準備をしてください」 「わ、私は別に構わないわ。お母さんだって、お父さんの愛人だったもの…!」 虚勢も含んだ返事に、ジョルノは今度こそ厳しい目を向けて言った。 「…貴方はもう少し自分を大事にするようにそのお母さんに教わらなかったんですか? 僕にこれ以上関わると邪悪なことに関わることになる。これ以上は言わせないでくださいね」 「で、でも…」 テファの返事にジョルノは奥歯をかみ締めて無視した。テファが黙り込んでしまったので、もしかしたらとても怖い顔を見せてしまったのかもしれないと思ったが、気にしなかった。 荷物からプレゼント用のアクセサリも見つけてたので、一方的に話を打ち切り、ジョルノは急いで部屋を出て行く。 残されたテファは、決意を決めた。 ジョルノが置いていった亀に声をかける。 「ポルナレフさん、貴方に協力してもらいたいことがあるの」 「お、俺か?」 「土くれのフーケを、マチルダ姉さんを今夜私が助け出すわ。お願い、手を貸してください」 胸の前で手を組んだポーズでお願いされたポルナレフには、フランス紳士的にも、女性のお願いを断る事は出来なかった。 「ジョルノ…お前が置いていくから悪いんだぜ?」 少しして、ミス・モンモランシの部屋に手紙やらと一緒に大量の花を生み出して贈ってから、ジョルノは慌てて出たせいでポルナレフを置いてきてしまったことを思い出したが… どこかで見た体格と歩き方をする2m以上の大柄のイケメンの青年を見かけてしまい、それどころではなくなってしまった。 「ボン・ジョォルノご主人様。既に…! 二人ほど既に、ダンスの相手を決めたぜ」 「それはよかった。ラルカス、後でテファにもフェイスチェンジをかけてあげてください」 「了解した。だがもう少し待ってくれ。向こうに美女が見える」 以前教えたイタリア語で適当に挨拶を返す牛男に軽く怒りが沸いたが、『フリッグの舞踏会』というのは何か特別な舞踏会なのかもしれない。 そう思うことにしてジョルノは他の場所へと足を向けた。 自分の事ばかりではなく、一応他にも会うべき貴族の子息達がいる。 舞踏会に向けてジョルノ自身の用意もある。 そうした些事に時間を取られ、ポルナレフやテファがどうしているか把握できない間に、少しずつ日は傾いていった。 『フリッグの舞踏会』が始まる時刻へと、時間は流れていく。 ポルナレフと喧嘩中のルイズも、部屋で泣くのを止めてドレスを身に纏い、髪型をセットし、軽く化粧をしていた。 あんな使い魔のことで『フリッグの舞踏会』にでないなんて貴族にあるまじき行為だと、ルイズの反発する心は感じたからだった。 化粧を終え、泣いた後が見つからない事を鏡で確認するルイズは、不意に一つのことに気付いた。 「そうだわ…ッ! 逆に考えるのよ。あんな奴、使い魔じゃないって言うんなら…」 ルイズは杖を持ち、鏡に向けて軽く振るった。 「私はもう一度使い魔を召喚できるって考えるのよ」 責められた時のポルナレフの顔が脳裏に浮かび、罪悪感を感じたが…ルイズは無理やり笑い、会場に向かう為部屋を出ていった。
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あ、ありのまま今起こったことを話すぜ! ある日私は亀をマジシャンズレッドに運ばせて散歩していた。 とてもいい日和だった…日の光は燦々と降り注ぎ、海が近いと聞いてからどこか、微かに潮の香りを孕んでいるように感じられる風が吹き、木々が擦れあう音をBGMに、舎弟にしたオーク共が運んでくる果物を平らげていた。 だが…よりによってそこをガキどもに見つかり私は逃げた。 捕まったら玩具にされるのは目に見えていたし、部屋まで見つかったらどーなることか考えたくもない。 だがその時、私はまた見覚えのある鏡のようなものが正面に現れ、私は勢いを殺せず入り込んじまった…余所見運転は良くないってことだな。 ……な、何をいってるのかワカラネーと思うが、私にも何がおきたのか分からなかった。 偶然とかジョルノ謀ったなとかそんなちゃちなもんじゃねー…もっと恐ろしい運命のいたずらを味わったぜ! いつまでもそんな事を言っている場合でもない。 混乱する頭のまま私は亀の中からマジシャンズレッドを出した。周囲を警戒させる為だ。 どういうことかは理解している。私はこの魔法を知っている! 二度目だからな。 ジョルノがテファから聞き出し、あれがサモンサーヴァントという魔法である事は知っている。 使い魔を召喚する魔法を使い、テファは友達を作りたかったらしい。 ジョルノが言うにはマチルダお姉さんがテファの護衛になる生物が召喚されればいいと考えて教えたようだと言っていたが…が、そんな理由で召喚する奴が何人もいるとは思えない。 恐らく、今回は文字通り使い魔を作る目的のはず…必ず近くに私と亀を召喚した野郎がいるはずだ。 周囲は騒がしかった。周りには数十人の人間…皆ローブやらマントを着て杖を持っているところからするに、コイツら全員がメイジか。 リアクションからするとジョルノがスタンドが見える人間がこの世界にもいるかもしれないと危惧していたが、どうもここにはスタンドが見える奴は一人もいないようだが… この世界の人間が使う魔法は杖が必須だとも聞いている。 だから私の近くにいて杖を持ってる奴が召喚した奴ってことになるんだがこれじゃあ見分けが付かん…! 私は愕然とした。 皆もってるじゃねぇか!!と。 だが判断しないことには始まらない判断する為、私は周りの奴らの会話を聞き取る。 どーやらこいつらにとって亀が召還された事はかなり意外だったようだ。 そして周囲にいる連中の視線の先には、微かに杖を持った手を震わせている子供がいた。 コイツか。 可愛らしい顔をしているが、背丈と控え目に言って包容力0な体格からして、多分ジョルノより年は下だろう。 もう一度周囲を伺い、周りの連中の態度から判断するに、やはり召喚したのはコイツだな。 そう結論した私には二つの考えがあった。 一つはこのまま使い魔になる。 もう一つはある一族の伝統に習って逃げる。 娘が何か唱えながら近づいてくる。 このままキスして契約完了するつもりなんだろう。 あまり時間はない… 私が選ぶべき道は…私と亀だけが心地よく感じる道。 急激に曲がりまくり、だが遮るものは何もない、そんな道だ。 そこには光が見えるはずだ。光の中へ…だがしかし、光が見えない時はどーすりゃいいんだ? 私には光なんて見えなかった。 ただ草が生い茂る草原が見え、遠くに塔等の建物が見え… 空を仰げば太陽は輝いているが、何の慰めにもならない…む、ピンクか。 『SUKIYAKI』の歌詞の通り、人は上を向いて歩かなきゃあならないって事を言葉じゃあなく視界で理解したぜ! い、いや…違う!私はロリコンではない…! 何がかはとりあえず置いておくとして、もう迷っている時間はなくなったようだ。 仕方ない。せっかくだからジョースターさんを見習って逃げさせてもらおうかと、一瞬考えた。 だがその時! ナイスガイな私は三つ目の道を思いついた。 「マジシャンズレッド!」 叫んで呼び出すのは鳥頭な我が相棒。 俺を何度も助けてくれた男、アヴドゥルが俺に力を貸してくれているのだ。 私は急いでマジシャンズレッドに周囲を見させながら手元に戻す。 マジシャンズレッドが戻り、手を凝視するその間に娘は私が入っている亀を持ち上げた。 何をしようとしているのかわかっている。 娘の唇が亀に近づいてきた。 このままキスされては不味いぜ! だがスタンドとは出来て当然と思う精神力…! 私は娘がキスする瞬間、! 素早くぺらぺらにしたマジシャンズレッドの指を、娘と亀の間に挟んだ! そして亀にはすまねぇが、周りの使い魔どもに刻み込まれたタトゥーのパーツを適当に組み合わせたものを、亀の左前足に焼き印する…! やばい、ちょっとミスったか? 控え目に言うと頭が眩し過ぎる男が横からきて亀を覗き込んだ。 正確には今私が刻み込んだタトゥーをだ。男はニッコリと微笑んだ。 緊張していた娘の顔にも笑顔が広がっていく。 「おめでとう、ミス・ヴァリエール。こちらは一度で成功したようですね…ふむ、珍しいルーンだ。それに甲羅に鍵、か…ふむ珍しい」 やれやれ、どやらうまく行ったようだな。 「いいから下ろしてくれ」 亀の中でガッツポーズをとった私はそのまま好奇心でハゲ達に鍵を触られる前に抗議する。 「「亀がしゃべった!?」」 おっと、契約しても亀は喋れないのか。 一部の生き物だと人間の言葉を喋れるようになると聞いてたんだがな。 どう言い訳するか考えてみても、理由が思いつかない。 そうだっ! 逆に考えるんだ。 私が理由を考える必要はない。考えるのはコイツラに押し付けてしまえばいいと考えるんだ! 「ご主人様、あんたが契約したからじゃないか」 まぁ多分、これで誤魔化せるだろう。ここに呼ばれてからの自分の機転に惚れ惚れしながら私は二人が次にどうするかを見る。 ミス・ヴァリエールとか呼ばれた娘はハゲを見上げた。 「先生、そうなんでしょうか?」 自分の知識では確証が持てないのだろう。 ハゲを見上げるその視線からは疑問に答えが出ないのが見て取れる。 それに引き換えハゲの方は堂々としたもので、全く戸惑った様子は無かった。 「さあ? 私の知る限り契約した亀が喋ったという事例はありませんが…こうして喋っている以上そうなんでしょうな」 「そんな適当な…」 ナイスだぜハゲ。お前は色々な意味で輝いてる。 私の口には出せないエールを受けたハゲの視線が一瞬凄みを帯びた。 こ、この視線はまさか…気付いたのか!? 「誰かが私をハゲなどと言う極めて不遜な! 私達には相応しくない非!貴族的な呼び方をしたような気がしたが、気のせいかな?」 ハゲが何かブツブツ言いながら亀とミス・ヴァリエールを観察している。 ミス・ヴァリエールも目を伏せ、決してハゲとは目をあわそうとはしない。 他の者もだ。私は戦々恐々としながら、息を潜めてそれを眺めていた。 「…君が使い魔を提供してくれるというなら調べようもあるが、どうしますか?」 「おい娘! コイツ私を解剖する気だぞ!」 「娘じゃないわ! ご主人様って呼びなさい!…すいません。コルベール先生、提供する事はできませんわ」 偉そうにわめいた後、取り繕いながら娘はハゲ・コルベール・センセイに断りを入れた。 これ以上にないほどうまく行っている気がする…まさかこれがちょっと前にジャポネーゼの一部で流行ったというずっと俺のターン!? 冗談は兎も角、ジョルノが見つけてくれるまで、なんとか誤魔化し通さないとな。 しかし向こうは戦争が始まっちまってるし、土地勘もない。 逃げても私もやはり土地勘は0! しかもメイジ100人とかに追われちまうかもしれない…暫くは使い魔の振りして過ごすしか、ないのか? 前途多難に私はちょっと落ち込んだ。 眠る前にフランス語版『鼻をなくした象さん』を読んだら、ぐっすり眠れた。 その頃のアルビオンでは、戦争の情報などを手に村へ戻ってきたジョルノが亀がいなくなった事を聞いていた。 説明をするにつれ微かに表情を変化させるジョルノに、子供は震えていた。 コロネを怒らせるとどうなるか既に経験済みの態度だった…ジョルノはそんな彼らの上を視線で撫でつけちょっと威圧する。 実に楽しそうにテファには見えたという…勿論、ジョルノの心なんて全く読めないので多分自分の妄想とテファは思うようにした。 「亀がいなくなった?」 珍しくその声は戸惑っているような印象がして、テファは子供達がしでかしたことに余計に申し訳ない気持に陥る。 ジョルノは、亀を大事にしていたんだと気付いたような気がした。 「うん、子供達が言うには、亀が空を飛んで鏡の中に入って行ったって…ごめんなさい」 「何がです?」 不思議そうにするジョルノにテファはオーガを従えて宴を繰り広げていた亀を子供達が追い掛け回した事が事件の発端らしい事を説明する。 話を聞いたジョルノは爽やかな笑みを浮かべていた。 見ればその追い掛け回した当人達らしい子供達が不安そうにしている。 何をされるのかわからない得体の知れない恐怖に身を縮こませているようにジョルノには見えた。 「別に怒ってはいませんよ。どちらかというとその亀が悪いようですからね」 子供らの顔に笑顔が浮かんできたのを見てテファが言う。 「でももう生き物を追いかけ回したりしちゃダメよ?」 「「「はーい」」」 威勢良く返事を返し子供らは二人から離れていく。 残された二人は亀の事を思った。 テファが思い出すのは風呂を炊いてくれた亀。 ちょっとした火が欲しい時用意してくれた亀。 ジョルノが大事に世話して一人分の食事を用意していた亀…テファはジョルノに尋ねた。 「探しに行かないと…ジョルノ、何か思い当たる場所はある?」 ジョルノが思い出す亀…亀の中でアニメばかり見てる亀ナレフ。 テファの着替えを覗き、マチルダのスカートの中を覗いていたエロナレフ。 今度はオーク達と一緒に宴を開いていたらしい。 それで子供に見つかって追い掛け回されて…多分召喚されちまったんだろう。 ジョルノは一度瞬きをして考えてからこう答えた。 「日が暮れてお腹が空いたら帰ってくるんじゃないですか?」 「そ、そうかしら?」 「はい。それより戦争が始まったのは知ってますね?」 ジョルノはそんなことどうでもいいと話を変えた。 テファはいつになく真剣な表情にドキリとしながら、頷いた。 戦争が始まったという話は、マチルダに頼まれいつもこの村に物資を運んだりしてくれる元貴族らしい男達から聞き及んでいた。 詳しい事情は分からないが、王党派が苦戦を強いられ徐々に追い込まれているらしい… 「う、うん」 「そろそろ戦火が近づいてきたから僕はこの国から脱出します」 ジョルノの耳にはもう少し詳しい情報が流れ込んでいた。 王党派の今後予定している作戦の端々、戦力、逃げようとしたり隠し持っている財産を動かしている者。 それらから今後どう動いていくか、王が今どこにいるかもある程度想像がついていた。 レコンキスタの情報も同じく入っていた。 彼らがどのように動いていくか。彼らが祭り上げるクロムウェルの能力、それにより生き返ったように見える死者の兵隊。 クロムウェルに影のように付き従う秘書の存在…ジョルノは今のままでは王党派の命脈は長くないだろうと考えていた。 急ぐ必要があった。 「え?」 一瞬何を言われたか分からなかったテファにジョルノは無駄なことは嫌いなんですがと言いながらもう一度言う。 「ロマリアに良い孤児院が見つかりました。貴方方さえ良ければ僕が責任を持ってそちらに連れて行きます…どうします?」 ジョルノは手を差し出した。 戸惑った様子を見せてから、テファはジョルノの手を握った。 握ったジョルノの手は少年の手のように柔らかく、しかし力強くテファの手を包んだ。 これから村の外、母を殺害した兵士のような人、エルフを敵としてみている貴族や宗教家達、見知らぬ土地へ行くということ、 外は戦争中で危険が迫っているとジョルノやマチルダの使いの者が判断した事…子供達は、そして自分はどうなるのか不安材料しかテファには思い浮かばなかった。 だが、使い魔として召喚し、使い魔になることは拒否したジョルノの手を握るテファに不安はなかった。 奇妙な安心感が胸を一杯にしていた。 理由はよくわからなかったが…スッと、詳しい事を説明するジョルノの言葉は胸に、雨粒が乾いた大地に染み込むように安堵感を与えてくれていた。 それが潤いを与える恵みか、土を流し大地の姿を変えてしまうものかは考えられなかった。 雨の中で微笑むのも、懸念を抱き険しい表情を見せるのもテファの自由で、先を予想して警鐘を鳴らすものはいなかった。 数日後には、その村から人の姿は消えていた。
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【名前】 ジョルノ・ジョバァーナ 【大きさ】男子中学生並み 【攻撃力】ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム;指先から光速の65倍の速さで発射 直撃した太陽を爆破した 【防御力】宇宙生存可能 恒星破壊に耐える 【素早さ】光速の678,934倍 【特殊能力】GED;相手の行動と意思を無効にする 名前 コメント
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あ、ありのまま今起こったことを話すぜ! わ、私はこの世界に来ているのは私とジョルノと亀、それだけだと思っていた。 だが、奴が現れた。何を言ってるのかわからねぇと思うが、俺にも何が起こったのか理解できなかった奴はどこにでもいるとか生命力は高いとかそんなちゃちなもんじゃねー。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。 だがやられっぱなしってのは私の性分にはあわないんでな…チャリオッツも肉体も失ったが、私にはまだこの魂がある! つまり-殺らせてもらうっ! 私は手近にある物を一つ掴み、即席の剣に見立てると胸元で垂直にも持つ。ビシッとポーズを一つ決めてから、私は奴を見据えた。 中世にいた決闘前の騎士のように、そう…言うなれば三銃士の一人ダルタニアンのように! 神経が、研ぎ澄まされていく…奴の動きを、ほんの微かな部分まで見逃さぬように。 「うおおおっ!」 雄たけびと共に私は突進する。 決心し、気合を込めた雄たけびと共に繰り出した私の突きが、かわされた! だがそれはフェイントっ。 「かかったなアホがっ!!」 嘲りと共に私の手首が返され、剣先は今度こそ糞虫野郎に狙い違わず突き刺さる! 「フフン、私の剣の腕も錆びついていないようだな」 「…ゴキブリ一匹にどれだけ盛り上がるんです?」 得意げにゴキブリを即席の剣とした古新聞に包んで外に捨てる私の背に、ジョルノの声がかけられた。 我関せずとソファに座って読書中だったくせに余りに冷たい突込みだが、そんなことでめげる私ではない。 これが最後のゴキブリとも限らないしな。これからは注意が必要だぜ。 「もう一月も亀の中なんだ。この位はいいだろう? まだ私はお前のようにここの本も読めないんだからな」 この世界に来て一月。 ジョルノは既にこの世界、ハルケギニアの幻獣だの毒薬麻薬大全集だの簡単な本を読むまでになっているが、私はまだだった。 ガキども用の本を一冊ジョルノが借りてきたんだが、やっぱり私に勉強なんて性に合わん。 暇だが、やる気になるかどーかはまた別の話なんだ。 ジョルノは呆れたようだが、すぐにポルナレフさんだしとなぜか納得したようだった。 腹が立たないわけではないが、ここで見返してやるぜっ!といって絵本に集中するのは負けかなと思う。 所で話は変わってしまうが、最近ジョルノの奴が怪しい。 私が亀の中から余り顔を出さないからかもしれんが、何かこそこそやっているような気がするのだ。 昨日もテファが眠ってから私をほったらかしにして外にでていった。 怪しすぎる…これは戦闘者としての勘ではない。男の勘だが、ジョルノは何かまた私達を驚かせるつもりだぜ。 「そう言えば…ポルナレフさん、今度テファがお世話になっているお姉さんが帰ってくるそうです」 そんな事を考えていた私に、ジョルノが思い出したように言う。 ジョルノは、どうも重要な事をサラッと言うくせがあるように思えるぜ。 こんな重要な事をどーでも良さそうに言う位だからな。 「何!?テファのお姉さんが!?」 「はい。腕のいいメイジだそうですから、何か聞けるかもしれません」 突然ジョルノが言った言葉に私は戦慄した。 テファでアレだ。テファのお姉さんという事は… それはつまり、もっとけしからん胸のお姉さんがいるという事かっ!? けしからんっ!けしからんぞっジョルノ! 想像し、そう考えた瞬間、ジョルノの冷たい視線が私を貫いていた。 残念だけどアンタもうギャグキャラだなって感じの冷たい視線だ。 「お、おいジョルノお前何か勘「あっすいません。そういえば今日テファと晩御飯を探しに行く約束があるんでちょっと準備してきますね」」 白々しく聞こえる言葉を残してジョルノは立ち上がると、亀の天井へとジャンプして去っていった。 ぜ、絶望した! 年配に敬意を払わない今時の若造に絶望したっ! …こっちに着てから敬意を払われるようなことをした覚えはないがな。 「ジョルノ! 大変よ!」 「どうしたんです?」 「見て、今朝起きたら村の中にあの木が生えていたの」 木? 気がつけば、いつのまにか膝を突きOTLのポーズをとっていた私は外から聞こえてきたテファの言葉に首を傾げて、慎重に外を見る。 こんな時私の髪型は不利なのだが、そこは経験と俺のLUCKがカバーしてくれる。 気付かれずに見ることに成功した外は、そこはテファの家のジョルノに宛がわれた部屋ではなかった。 幾つかの小屋が立ち並ぶ村の中。朝日で光るコロネが眩しいぜ。 ジョルノがちゃんと私の入った亀を腰に括り付けていたお陰で私はジョルノの腰の高さから村の中を見ることができた。 村の中を見回してみると、成る程。確かに何本ものこちらでは見ない木がある。 村にいるガキどもが木に登ったり、あれ何?ってな具合にテファに尋ねたりしてる。勝手に実を食べてるアホもいるな。 私はその木に見覚えがあった。あれは…おお! 私は思わず歓声を上げていた。それほどに村に何本も見える木は私にとっては馴染み深い植物だった。 「あぁあれはオリーブの木です」 「オリーブって、ジョルノが前に言ってた木のこと? どうして突然ここに…昨日の夜ジョルノが植えたの?」 何を話してんだお前はと私は思ったが、ああそういやピザモッツァレラがどーとか話してたな。 私は納得した。つまりこのままオリーブを収穫してオリーブオイルを作っちまおうって腹だな!と確信したからだ。 私達の食卓に欠かせぬ物、それはオリーブオイル。イタリアで暮らす内に私も好きになっちまったんでこっちになくて困っていたんだ。 生粋のイタリア人であるジョルノはもっと飢えていたかもしれない。 そうか、! 昨日とかにこそこそ何かしてやがったのはこれだったんだな! 私はジョルノに視線だけで賞賛を送ったが、同時に疑問も沸いてきていた。 いや、だってよ。一夜にして何本もの見慣れない木をどこから持ってきたんだって話になるじゃねぇか。 テファもそこのところが気になってるみたいだ…ジョルノはどう答えるんだ? まさか、スタンドの事を説明するのか? 私とテファ、二人に加えいつの間にか周りにいるガキどもの視線を一身に受けるジョルノは、輝くような爽やかささえ感じられる笑顔を浮かべていた。 「さあ? 神様がテファにくれたご褒美かもしれません」 思わず私は亀の中でコケた。 テメェ、そんな嘘いくらなんでも誰も信じないぞ! もう知らんと、私はこの問題は丸投げしてこのオリーブからできるオリーブオイルで何をするかを考える事にした。 その方がよっぽど建設的だぜ! 「え?」 テファの戸惑ったような声が聞こえるが、無視だ。 「(こちらではどうか知りませんが)僕の国では、神が僕達を見ていてよい行いをしていればご褒美をくれるって教えがあるんですよ」 料理の仕上げに使ってよし。単純にバター代わりにパンにつけて食べるもよし。 夢は広がるな。これでここにトニオがいれば取れたばかりのオリーブオイルとここにある(保存があまりきかないから)新鮮な食材だけでんまぁい料理をこさえてくれるんだろうけどなぁ。 ここで気になってくるのは取れたオリーブオイルの色、香り、味わいなどの個性がどーかって事だ。 香り一つとっても、フルーティ(オリーブ果実の香り)、グリーン(草や葉のような青々しい香り)、ビタ ー(苦み)などに分けられるオリーブオイル。 どれが取れるかによってどう食うか色々と考えなくっちゃならねぇ。 「冗談はよしてっ。こんなできそこないの私に、おかしくなっちゃうわ」 「テファ…貴方が自分の生まれや、見た目にどんなコンプレックスを持とうと貴方の勝手です」 これから取れば…ジョルノの事だ。石臼もちゃんと用意してあるに違いない。そう決め付けてやる! てことはだ。晩飯を遅くすれば今日はちょっとだけ向こうの世界に近い食事が出来るってことだな。 テファ達がこの森で手に入れるものはきのこや自生する野菜。テファ達もちょっとは作ってるようだが、森で取れる植物が主だ。 人目を避ける為と、テファが村を離れると本当に子供しかいなくなっちまうんで、ジョルノが来るまではあんまり狩りもできてなかったらしい。 テファにお金を送ってくれるお姉さんの知り合いが週に一、二度この村に来て色々持ってきてくれるんだが…冷蔵庫がここにはないからな。 まぁそのおっさんに今度骨付き肉を持ってくるよう頼ませるとして…今日はあぁ、オリーブオイルをきのことかの仕上げにかけてもいいな。 「ですがテファ。僕は貴方の生まれなどは素晴らしいし、羨ましいと思っています」 「えっ? ジ「(貴方のお話を聞く限り)貴方のご両親は確かに愛し合っていましたし、大事に育てられたと感じるからです」 おっと涎が…心なしか腹が減ったような気がするし、ここは一つ晩飯が出来るまで『Goldorak』でも見て時間を潰すとするか。 こいつは日本のアニメだが私にとっても馴染み深い作品、見ているとノスタルジーに浸ることも可能な作品だぜ。 「もしそうでなかったとしても、他のエルフや人間がどう言おうと貴方は可愛らしいシニョリーナ、…いえ、お嬢さんですよ」 「ジョルノ…」 な、なんだかわからんが、いつのまにか外からストロベリーな空気が流れ込んでくるような気がするぜ! 私は愕然とし、それに対抗するようにTVの音量を上げていく。 ったく素人はわかってないぜ。これは男の子のアニメなんだ。ストロベリーな空気は『Goldorak』を見てる時は自重しろ! 「テファお姉ちゃんに手を出すな! このコロネ!」 「フ、では収穫しましょうか。この実から作れるオイルには食用以外で色々と使い道があるんですよ。石鹸…動物の物でも構いませんが、子供達では難しいですから」 「石鹸?」 「ええ。(サウナでは余り使わないと思いますし、原理も説明し始めると切がないので省きますが…)僕の故郷では汚れを落とすのに使う道具です」 GoldorakのOPテーマ。『Goldorak le grand(ゴルドラック・偉大なる者)』が亀の中に響き渡り、私のテンションを上げていく。 フフっ懐かしいぜ。 「高い枝の実を取る為の台も用意しておきましたから使ってください。僕は臼を使って実を絞りますから…食材も探しに行かなければ行けませんから、忙しくなりますよ」 「そ、そうね! 今夜は、オリーブオイル?を使って作りましょ!」 「はい。時間的に厳しいですが、なんとかやってみましょう」 そんなジョルノ達が作ったオリーブオイルの出来は余りよくないとは思いもせず、私はGoldorakを見続けた。 所詮、ここはアルビオンとかいう異国。 地中海の気候が良く馴染むオリーブの木が良い実をつけるわけがなかった。 寒暖の差が激しすぎるとか、色々と問題があったのだ。だが、Goldorakを見て満面の笑みを浮かべる私もテファ達もそんな事は考えていなかった。 実を一つ二つとって置いてその細胞から品種改良を試みるジョルノはどーかしらねぇけどな。
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フーケを捕らえたルイズたちを主役に、太陽が姿を隠す頃に舞踏会は幕が上がった。 円盤こそ戻らなかったが、着飾った生徒達も職員も皆価値のわからない宝物よりフーケを捕らえたという功績を称えていた。 それは他の生徒達から賞賛を受け、ダンスの誘いを受けているキュルケ達に暖かい目を向けるオスマンのお陰でもあった。 オスマンの命の恩人が残したとはいえ、それで武勲をあげた若者にけちをつけるような真似はオスマンには出来なかった。 探す為の手配も済ませてあるし、見つからなくともオスマン一人が気にかければよいことだと…オスマンは考えていた。 生徒が主役達…の中で唯一まともに相手をするキュルケや意中の相手に群がり、踊り、談笑し、タバサが小柄な体にとても入りきらぬような大量の料理を平らげるのを一通り眺めてから、オスマンは会場から抜け出す。 学院長である自分がその場にいない方が生徒達もより舞踏会を楽しめる。 使い魔のネズミを残し、使い魔が伝えてくる映像を肴にゆっくりと楽しむことに決めていた。 生徒達は会場を後にするオスマンに気付かない。会場を後にするオスマンが微笑ましく感じたタバサも、メイドが次から次へと運んでくる料理を平らげ続けるのに専念していた。 ドレスアップしても普段と変わらぬ無表情で手と口を動かすタバサは可愛らしかったが、その胸のうちは穏やかではなかった。 理由はタバサの使い魔であるシルフィードが、この舞踏会が始まる前になってタバサに伝えてきた出来ことのせいだった。 ジョルノが何故彼女の母を治すどころか詳しく話しさえ聞かない理由が、父の仇であるガリア王ジョゼフだということ。 母の事で熱くなっていた心が冷たく硬くなっていく…考えてみれば当然の事だ。 大国ガリアの王であるジョゼフならたとえ治療できてもまたすぐに母をもっと酷い目に…もしかしたら今度は殺してしまうかもしれない。 いや、タバサが思いもつかない残酷な手を使い母を殺してしまう…! ジョゼフの人となりなどタバサは知らなかったが、母が狂ってからこれまでずっと困難な任務に携わってきたタバサには、奇妙な確信があった。 どこかへ逃がせばと、考えていないわけではない。 だが他国へ逃がしても、それは同じことだ。 他国に逃げたくらいではジョセフの行動をちょっぴり遅らせるだけで、諦めさせる事などできないだろう。 公式には存在しないガリア北花壇警護騎士団の「北花壇騎士・七号」として過酷な任務を命じられてきたタバサには、楽観的な考えは浮かばなかった。 フォークを握る手に知らず力がこもる。 はしばみ草のサラダに突き刺し、勢い余って食器が微かに音を立てる。 その音で考え込んでいたことに気付いたタバサは、今は言い寄る男子生徒の相手をしているキュルケが戻ってきた時に感づかれないようにと表情を作り直す。 だがすぐにまた手に力が入ってしまうことをタバサは抑えられなかった。 何より、逃げて治療してどうするというのか。 ずっと、母と二人ガリア王国の手が伸びてきて危険な目にあうかもしれないと不安に思い、怯えて暮らすのか? ジョゼフの手が伸びてきた事に気付いたら、何度も何度も…どこまでも遠くへと逃げるのか? それこそ外国、直接の往来がない東方『ロバ・アル・カリイエ』などへ旅をして… 母と父を殺した男相手に、そんな惨めさを味わうのも、母に味あわせるのもタバサには、シャルロットには耐えられないことだ。 だがどうすればジョゼフを諦めさせられるのか…ジョゼフを殺す事ができるのだろうか? 物騒な事を考え込むうちに微かにタバサの表情が険しくなる。 タバサは席をたちまだ始まったばかりの会場を後にしようとした。 だが人の波を抜けていく途中、はしばみ草を使った料理が目の前を通り過ぎたので引き返した。 ダンスを踊りながら、タバサの意外な一面を見ることができたジョルノは微笑んだ。 タバサを見つける前に、約束を取り付けた女生徒達と踊っているミノタウロスを見たせいでささくれ立っていた気分がよくなっていた。 彼女が部屋に戻り、父の仇の娘であるイザベラから手紙が届いているのを見たらどんな顔をするか、少し楽しみだった。 「伯爵様、どうかなさいました?」 「…失礼しました。誘いに乗っていただいて少し浮かれてしまったようです」 困ったような顔で答えるジョルノに相手の女生徒は慌てた様子で返事を返す。 「か、勘違いして貴方がお困りにならないよう申し上げておきますわ。 貴方は私を慰めてくれる優しい方だから…今日の所は、私を気遣ってくださった優しい貴方のような方、外国の客人に恥をかかせるような真似はするなときつく言われているからよ!?」 曲に紛れて囁いてくるモンモランシーにジョルノは穏やかな表情で見返すことを返事の変わりにした。モンモランシーは、動揺した様子で更に言葉を重ねた。 「ト、トリスティン貴族は、すぐに心変わりするはしたない女だなんて思われるわけにはいかないのよ…お分りかしら?」 「はい、ありがとうございます。…ですが、余り無理をなさらないでください」 教養を感じさせる声で、できれば好感を得られるような口調で囁く。 近くで見るまでもなく、ジョルノにはまだ腫れている頬を隠すのに少し厚く化粧をしていること、踊れば時折指先や足に力がないことはよくわかっていた。 ジョルノは支えるように普通より身を寄せて気を付けてリードする。 モンモランシーを誘うよう頼んできたミス・ドラッタと彼女の彼氏らしき男が踊りながら場所を変え、モンモランシーの視界に入っていくのを眺めながら、モンモランシーと会話を続ける。 「一曲踊っていただけただけで私は満足しておりますから」 「あ、ありがとう……伯爵、誰にも気付かれずにあんな、ベッド一面を覆う程の花なんて、どうやって用意されましたの?」 恥ずかし気に尋ねたモンモランシーにジョルノは苦笑を返した。 「気付かれなかったのは運がよかっただけです。傷心の貴女に妙な誤解をされたくはありませんからね」 「答えになっていませんわ」 「貴方や今会場にいる紳士達は十六才以上、私はまだ十五ですからね」 「ですから…それがどうかされたの?」 年下ということにちょっぴり驚いたようだが、たった一年だが、この時期だとこの差は大きい。 成長期だから体格は大きく変わってしまう者も多く、知識も差が開く。 そう言う若い伯爵にまだまだ好奇心いっぱいの顔で尋ねてくるモンモランシーから、一見恥ずかしげにジョルノは顔を逸らす。 周囲にテファやラルカスやポルナレフがいないことを確認しながらそっけなく言う。 「可愛い女性の気を引くためなら男は頑張ってしまうものなんですよ。それが綺麗なお姉さん相手でライバルが多いなら尚更です」 「も、もう…お、お世辞がお上手ね…!」 はぐらかすように質問に答えながら、ジョルノはどうにか何度かのこうしたパーティーと今夜覚えたステップでモンモランシーをリードする。 顔を赤くして目を逸らしたモンモランシーの様子を見る限り、大丈夫そうだと判断する。 ゴールド・エクスペリエンスの能力を、スタンドを持っていることは隠したい。 ただの軽薄な成金と思われていた方が疑われるよりは余程いいと、ジョルノは考えていた。 こんな事を言っているとポルナレフ達には絶対に聞かせられないが。 「びっくりしたわ。それにあの詩も…とてもうれしかったわ。あんな詩を貰ったのも初めてなの」 思い出し、夢見るような目で自分を見上げるモンモランシー。 一つの曲が終わり、テンポが変わる。ジョルノは曖昧に笑みを返しながらモンモランシーの腰に手をあて、踊り続けながらテファを捜した。 テファもこの舞踏会に参加しているはずなのだが、始まってから一度もジョルノはその姿を確認できなかった。 嬉し泣きか微妙に涙ぐむケティの彼氏が何度も視界に入って鬱陶しかっただけだった。 一体どんな内容だったのか、ジョルノはモンモランシーが言う手紙を書いた張本人のドレス姿を盗み見ながら思った。 服装、マナー等一分の隙も見せないゲルマニアの成り上がり貴族が由緒正しいトリスティン貴族を誘い、親しげに踊る光景は人目を引いていた。 男達の誘いをやんわりと断ったキュルケが悪戯っぽく笑う。着たばかりの同郷の者が案外上手くやっているのを嬉しく思ったらしく、タバサに話しかけながらちらちらと二人を見ている。 その同郷の貴族は、今この場にいない亀とテファを探す為少々強引にモンモランシーの手を引き、立ち位置を変えながら気持を荒立たせようとしていたが。 奪還予定の土くれのフーケを自分が助けると言っていたテファの姿が、ジョルノの脳裏に浮かんでいた。 いつにも増して凄い勢いで料理を平らげていくタバサに苦笑しながら、キュルケは隣に座った。 給仕からワインを受け取り、踊る間に乾いた喉を潤しながらキュルケはジョナサンとラルカスを、会場全体を見る。 二人の外国人に対抗心を刺激され、舞踏会は去年よりも盛り上がろうとしているように、キュルケの目には映った。 踊る為の軽やかな音楽に交じって入り口の兵士が、声を張り上げるのが聞こえる。 円盤を失った事に関してはお咎めもなく、シュヴァリエの称号ももらえるというのに… 髪を結い上げ、可愛らしいドレスや薄い化粧で普段より何割かましで可愛らしくなったルイズが、硬い表情で会場に現れた。 少し沈んだ表情が逆に気を引いたのか、ゼロと馬鹿にしていたルイズの可憐さに気付いた男達が動く。 ゼロ相手にと足を止めかけ、だがフーケを捕らえたんだし誘っても恥ずかしくない相手だといいわけも立つと、男子生徒が群がっていく。 そんな男子生徒達の相手をする気などなさそうなルイズからキュルケは目を離し、ため息をついてタバサに話しかけた。 「ルイズ、カメナレフと仲直りできるのかしら?」 話しかけられたタバサは手を止めた。 カメの中で見た亡霊、ポルナレフ…タバサは震えそうになる体を叱咤し、平静を装って返事をする。 「新しい遣い魔を召喚するかもしれない」 「…それって、ルイズがカメナレフを殺すってこと?」 驚きながらも、声を潜めて尋ねるキュルケに一瞬頭に亀鍋が浮かんだ。 結構おいしそうなきがする…がタバサは首を横に振る。 「契約は完了していない、と言っていた」 「…ちょ、ちょっと、それって…まさかあのルイズがカメナレフをあの伯爵に返すって言うの!?」 驚くキュルケにタバサは返事を返さなかった。 テラスへと出て行くルイズが、どうするのかタバサにはわかるはずも無かった。 ダンスを断られ、会場の外へと出て行くルイズの背中へチラチラと視線を投げかける。 諦めて他の女性に声をかける者。すぐに戻るだろうと腹を括って壁を背に談笑する者達。 他の女生徒踊って時間を潰す者などのけして少なくは無い男達の目を潜り抜けて、ジョルノはルイズを追った。 今どこにいるか知らないかも知れないが、ポルナレフの今後の事だけでも、ルイズとは話しておく必要があるのだ。 会場の騒がしい灯りに照らされたテラスで深いため息が一つ零れたが、夜の闇にテラスを浮かび上がらせる会場の明かりが、テラスにまで流れてくる奏でられる楽曲と人々のざわめきがそれをかき消す。 「…会場にはいないみたいね」 新しい使い魔を召喚すると決めたものの、ルイズはまだ悩んでいた。 最後にもう一度話して、いいわけでも聞いてみるつもりだったが当ては外れたようだった。 ポルナレフに対して悪気を感じているわけではない。 ルイズの怒りはまったく収まっていない。 使い魔が主人であるはずの自分を裏切っていたという事実は単純に辱めを受けたような気分だったし… 何より、コントラクト・サーヴァントに失敗しただけでなく、使い魔として呼んだ者に騙され続けていたなど…ルイズには到底許容できる話ではなかった。 貴族として、メイジとしての自分を立証するはずの存在が、自分を騙していた! 使い魔として召喚に応じながら拒否し、挙句裏では、使用人達の様に自分を嘲笑うか哀れんでいたというのか!? 「ただの平民が、カメナレフが…私を!」 思い出して再燃した胸を焼き尽さんばかりの怒りや悲しみが、憎悪が、涙になって頬を流れた。 初めて成功した魔法が失敗したことは、ルイズを深く傷つけていた。 使い魔になるのは嫌だけど暫くは我慢してようなんて、そんなことを考えていることにも気付かずに主人面して振舞っていたなんて道化にも程がある。 家族や父祖達と自分の間に広がるどうしようもない差をはっきりと見せ付けられ、否定的な考えがルイズの心を覆っていた。 フーケを捕らえたのだって、自分の手柄ではなくカメナレフに、恵んでもらったようなものにしか感じられない。 そんなもので注目され、認められる自分が情けなく悔しかった。 メイジが即ち貴族というトリスティン貴族の価値観をルイズも持っている。 そう育てられてきたからだ。 だが、貴族として生まれたというのに、ルイズは魔法ができない…いつかできるはずと頑張ってきた結果は、こんな様だ。 (勿論そんな事はないが)ルイズは、学友には馬鹿にされ、家族にさえ『ゼロ』であることを心配される自分は、使い魔に騙された愚かな自分は、ヴァリエール家の人間ではないような気さえしていた。 相手と別れ、ポルナレフのことで話そうとして一人になったルイズのところにきたジョルノは、泣いているルイズを見て足を止めていた。 こんな時に一人ルイズが泣く理由はルイズのぼやきでわかっている。 ちょっぴり寄り道しただけのつもりだったが、その結果こちらもかなり面倒なことになっているらしいことをジョルノは察せざる負えなかった。 わざと足音を大きくしてルイズに近づいていく。 他人が来た事に気付いて我に返るルイズに声をかける。 「ミス・ヴァリエール」 「…その声は伯爵様ですか?」 「はい、少しお話したい事があります」 近寄ってくるジョルノが話したいことが何かを考え、ルイズは身を硬くした。 ジョルノはポルナレフの飼い主だと言っていたし…中身のことを最初に口にしたのもジョルノだった。 姉を治してもらったことには感謝しているが、そう言った意味では嫌な相手だから少しポルナレフのことかと思ったのだ。 だがジョルノは、ルイズの様子を見て今はそんなことを話す気はなくなっていた。 「貴方の魔法の件です」 「私の…?」 広間から零れる光に照らされたルイズが自虐的な表情を見せる。 気付かない振りをしてジョルノは続ける。 「はい、貴方のご家族から話を聞いていたのですが。私が以前見た古い記録に貴方と全く同じメイジのことがあります」 「私と同じ…」 ルイズもこの学院に着てから、魔法が使えるようにと日々努力してきたのだ。 てがかりを探して図書館で色々と調べていた時もあるが、ルイズのような事例は見つからなかったのだ。 微かに驚いたような顔を見せて見上げてくるルイズに頷いてみせる。 記録というのは嘘だ。 探してみてはいるが、優秀なメイジの記録は残っていても魔法が使えないメイジの記録は残っていない。 魔法ができない者など、家の恥として消してしまうのだ。夜風で目にかかる髪が少々鬱陶しい。 やはりヘアスタイルはコロネに限る、とジョルノは思った。 「結論から言います。貴方の系統は虚無かも」 ちょっぴり茶化すように言うジョルノに、ルイズは絶句したようだがすぐに嘲笑った。 始祖の系統を全く魔法が使えない自分の系統だとは信じられなかった。 ジョルノもテファの魔法を見ていなかったら、そうは思わなかっただろう。 だがテファの魔法はラルカスを始めとしたメイジ達や書物を調べても存在しない。 それにテファが魔法を覚えた経緯を聞いたジョルノは、彼女は虚無の系統ではないかと結論付けていた。 「虚無…?虚無ですって!? 伯爵様、私をからかうのは止めてください…!」 「信じられないという気持はわかります。私自身、半信半疑ですしね」 ジョルノの返事に怒りを微かに見せるルイズに、ハンカチを取り出して持たせる。 背を向けてジョルノは眩しいほど明るい会場へと戻っていく。 ラルカスにテファがどうしているか確かめたかった。 馬鹿な事をしていなければいいのだが… 「虚無のメイジが魔法を覚えるには通常の方法では無理です。貴方が確かめたいとおっしゃるなら私は協力しますよ」 返事を待たずにジョルノはラルカスに詰め寄っていった。 フェイスチェンジを使い、両手に花状態で飲み食いしてる牛男が、ジョルノの表情を見て顔を引き締めた。 椅子に腰掛、寛いでいた姿勢のまま空中に浮かび、ジョルノの前に立つと少々古風な礼をして主人を迎える。 ジョルノもラルカスが連れていた女生徒達や漁夫の利を狙って周りにいた男子生徒に軽く礼をして、ラルカスを連れて行こうとする。 しかし名残惜しそうに女生徒達を見たラルカスは、慌ててジョルノの耳に口をよせた。 ボスと呼ぶわけにはいかないので、人気の無い場所に行こうとするジョルノの肩を掴み、ラルカスはジョルノを旦那と呼んだ。 「旦那、テファのことなら問題ありません。例の件も進行中だ」 「そうですか」 例の件、とは土くれのフーケの救出のこと。 一瞬鋭い目を見せたラルカスの言葉にジョルノは足を止めて肩越しにラルカスを見た。 場の雰囲気に合わせて顔には笑顔が浮かんでいたが、その目を見たラルカスの背中には冷たい汗が流れた。 何故ならこの場から今撤退する事などできないからだ…! 久しく参加する事ができなかった紳士淑女の戦場。そこへ再び足を踏み入れた記念すべき今日この日を…! 女生徒数人とダンスを踊り談笑するだけで満足できるのか? 否…断じて否だった。 その為に苦労していつもより偏在を一人多く出し、フェイスチェンジさえ習得したのだ。今日この日の為に…! いつになく真剣なラルカスの表情を、一応ジョルノは信用してみる事にした。 フーケの救出にはラルカスの偏在をジョルノは向かわせていた。 他の者に任せるつもりだったのだが、一つ問題が生じたのだ。 他の勢力が、思ったよりも早くフーケが捕らえられた情報を手に入れ、こちらに向かっているらしいことが耳に入ったのだ。 レコンキスタのネズミ。それもかなり腕の立つメイジが一人向かっているらしい…万全を期すという意味でジョルノはラルカスに命じたのだが。 「テファと一緒ではないでしょうね?」 「ああ、一緒にいるのはポルナレフだ」 ポルナレフが一緒にいると言われ、ジョルノは微かに眉を動かした。 「ポルナレフさんの亀の中は確認済みですね」 「…ああ、いや…それは忘れてた、かも」 誤魔化すように笑い始めたラルカスを見て、ジョルノは会場から出ることを決めた。 聖地奪還を目的に掲げる貴族達に組するメイジがハーフエルフのテファを見たら厄介なことになる。
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舞踏会が始まった頃にまで、時間は戻る。 ジョルノがイザベラと踊っている頃に、ポルナレフの入った亀を抱えたラルカスの偏在は牢屋への道を走っていた。 ラルカスは急いでいた。 フーケの身柄が、明日にもこの魔法学院から遠く離れたトリスティンの城下町の一角にあるチェルノボーグの監獄に移送されてしまう、というのもある。 学院の牢とチェルノボーグの監獄とでは軽微に大きな差がある。 兵士を買収すれば案外簡単に侵入できるのかもしれないが、兵士へと引き渡すまで身柄を任された魔法学院の牢から脱獄させる方が容易だと、ラルカスは考えることにした。 魔法学院の面子はこれでまた潰れてしまうだろうが、急がなければならなかった。 理由は二つある。一つは、テファがジョルノに反抗し組織入りを望んでいること。 彼女が手っ取り早く手柄を立てジョルノに本気であることを示すには今やるべきだとラルカスは考えていた。 テファまでいなくなると潤いがなくなる…ということではなく、テファの境遇を考えれば普通に暮らすことを考えるより目の届く所において事務仕事でもやらせておけばいい。 ジョルノとラルカス、ポルナレフにフーケまでが加わるのだからなと、個人的な意見だがラルカスはそう考えていた。 もう一つは『土くれのフーケ』を求めるのはジョルノのパッショーネだけではないということだ。 『レコンキスタ』と名乗る組織がフーケをスカウトしようとしているという情報が入っていた。 それ自体は余り驚いてはいない。 ジョルノはテファを自分から切り離す為にフーケを使う予定のようだが、ラルカスだってできればパッショーネに参加させたいと思っているからだ。 だが、本体は(勿論コルベール等のジョルノに指定されたメイジと親交をもとうとはしているが)舞踏会を楽しんでいるし、他にもヴァリエール領内などで暗躍している偏在がいるため余り多くの精神力を分配する事は出来ない。 もしもの時の事を考えてポルナレフも連行してきたが、できれば『レコンキスタ』が来るより先にフーケを引っ張り出したいと言うのも、ラルカスの本音だった。 本体の視界に髪を黒く染め、コロネを解いて髪を下ろしたジョルノが親交のある貴族の子女や調べておいた有望そうなメイジと談笑している姿が入ってきて少しため息が出たが、今回は仕方ない。 ジョルノがこの場にいたら、亀の中に手を突っ込んでテファがいないかどうか入念に調べてしまうだろうからな。 気付かない振りをして亀を荷袋につめたラルカスは、警備の兵士を金と自分が地位の高い貴族であるという振りでクリアして牢屋への道を急いだ。 本体の視界では、その時はまだジョルノは頭の禿げた中年教師の発明の話を熱心に聞いていた。 牢屋に続く通路は、余り清掃がされておらず汚れていて薄暗い。 舗装されているだけで隠れ住んでいた洞窟と大差ないとラルカスは感じた。 煉瓦で組み上げられた壁を照らす、一定の距離を置いて設置された灯りをラルカスは消していく。 ミノタウロスという身体能力では人間を超える怪物の肉体を持つラルカスには、灯りが無いほうが有利だった。 灯りを消しながら黴臭い空気が淀む通路を進むラルカスの荷袋の中、その中でじたばたする亀の中でポルナレフは神妙な顔つきでソファに座っていた。 普段ジョルノが座っている所から人一人分程離れた位置にはテファが緊張した面持ちで座っている。 テファの手には彼女が魔法を使うための杖と、ジョルノがこちらに着て作り出した拳銃が握られている。 ジョルノの夢に付き合う為には、手を汚す覚悟がいると思っているのだ。 ポルナレフはそれを見て少し罪悪感を覚えた。 テファをこんなことに関わらせるべきではないというジョルノの考えに、ポルナレフも基本的には同意しているし、何よりジョルノを裏切る行為だという理解しているからだ。 だが、ポルナレフにはテファの頼みを断る事ができなかった。 テファの真剣な眼差しから感じられる、初めて出会った時の彼女からは考えられないような事を行うと決めた意志に… 既に、それは所詮他人に過ぎないポルナレフが説得できる時期を過ぎていると悟ったのだった。 ここで協力せずジョルノの考えどおりにした所で、テファはジョルノを追いかけてより厄介な事になる。 そう感じたポルナレフは、テファの行動を助ける事を決めたのだった。 だが…ジョルノの荷物から持ってきた拳銃をポルナレフに見せたテファを、ポルナレフは脳裏に描く。 だが、助けると決めてもジョルノの判断の方が正しいような気もしている。 その相反する気持がせめぎ合うお陰で、本当は考えなければならないルイズとのことを余り考えないようになっているのだが。 今は無事にこの件を完了することだけを考えようとしているポルナレフは気付かなかった。 ジョルノを裏切ることになると知っていて協力することを決めたのだ。 最低でもマチルダの救出を完遂し、無事に送り届けるまでは完遂しなければポルナレフのプライドに障る。 あ、ありのまま現状を説明するぜ。 私は再会したテファに同情していたら彼女が悪の道に入る手伝いをする羽目になった。 な、何を言っているかわからねぇと思うが、私にも何が起こっているか(事情が全く)わからなかった。 って言うか私は今こんなことをしている場合じゃあないんだがな。 ポルナレフは内心ため息をつきながら、思いつめた表情で胸元を押さえる手にルイズ達が持っているような杖を握るテファを見る。 自分が泣かせてしまったルイズと比べると同じ生き物なのか疑うような物体が目に入り、ポルナレフは唾を飲み込んだ。 「…ゴホンッ、テ、テファ。もう一度だけ聞いておくぜ。もうすぐ牢屋に着くと思うが…本当にいいのか? こういっちゃ何だが、マチルダお姉さんを助けてもジョルノがお前を組織に入れるとは限らないぜ。アイツを怒らせるだけかも知れん」 「うん。でも、やらなくちゃならないの」 ラルカスのフェイスチェンジで普通の人間の娘のように見える顔を俯かせたまま答えるテファにポルナレフは片手で頭を抑えた。 やはり今のテファを見る限り、説得しても無駄だとしか思えなかった。 後でテファも救出するのに協力しただとか言ってもいいと言っても、テファは退こうとはしなかった。 ここまでやるなんて、まさかジョルノの野郎。 ポルナレフは腕を組んで考え込んだ末、 「手は出してないと言っていたが…実際はテファに子供達には聞かせられないような手を出しまくっておいて、履き古した服をタンスの肥やしにするみたいに厄介払いするつもりなのか?」 「ポルナレフさんよ…アンタ、声に出てるぜ」 天井からラルカスの突込みが入り、ポルナレフはテファに平謝りする。 テファは首を振ったが、意味はわかったのか顔を赤くしていた。 ばつが悪そうにするポルナレフをフォローするように、ラルカスの声が再びかけられる。 「見張りが見えてきたぜ…どうする? 金を掴ませるかそれとも眠ってもらうかだが」 「眠ってもらうのが一番だな。私に任せろ」 「よし」 ポルナレフがマジシャンズレッドを出す。 ルイズとの一件で凹んでいるせいかいつもより迸る炎の勢いは緩やかなようだ。 上半身裸の鳥男は荒ぶる鷹のポーズで亀から飛び出し、亀を抱えたまま早足に歩くラルカスに先行する。 牢を見張る兵士があくびをしている姿が目に入る。 舞踏会の夜だから気を抜いているのかそれとも普段からそうなのかはわからないが、ポルナレフは好機と見て一気に距離を詰める。 「ムゥンッ、赤い荒縄(レッド・バインド)!」 亀の中で突如私があげた叫びに呼応し、マジシャンズレッドが炎の縄を放つッ! 兵士が炎の熱と光に気付き、驚きと共に顔を向けた時には勢い良く伸びた炎が腕を、足を縛り上げ、口を塞ぐ。 中々の速度と精度、そして兵士の顔焼き尽さない程度の奇妙な熱さ。 私は着実にマジシャンズレッドを制御できるようになっている事に少し満足感を覚えた。 崩れ落ちる牢番から牢屋の鍵を奪い取り、ラルカスに投げる。 空中に浮いた鍵や炎の縄をラルカスがどう思ったかは気になるが、ラルカスは何も言わず走り出した。 廊下を通り抜け、牢獄へと続く階段を下りていく。 「ポ、ポルナレフさん突然どうしたの?」 だが、いきなり雄叫びを上げた私の姿はテファには奇怪なものに映ったらしい。 ドン引きしながら声をかけてくるテファに私はスタンドのことを説明しちまった方がいいような気がした。 「ああ、これはスタンドって言ってな。まぁ魔法みたいなもんだ」 「そ、そうなの…」 なんだか誤解が解けていないような気がするが…ま、まぁ余り気にしないで置くとしよう。 今はそれよりも早急にやらなければならないことがある。 ラルカスは既にフーケが入れられている監獄が並ぶ階層に着ている。 「おや! こんな夜更けにお客さんなんて、珍しいわね」 奥の牢から聞こえてきた声にテファは笑顔を見せた。 「この声、マチルダ姉さんだわ!」 「そうなのか?」 ちょっぴりしか聞いた事が無い私には判断が付かないが、テファの様子を見る限りは間違いない。 ポルナレフは再びマジシャンズレッドを亀の外に出してラルカスが見ている牢の中を見る。妙齢の女性が身構えていた。 剣術を嗜んでいたポルナレフには彼女がそれなりに喧馴れしていることと彼女のボディはやっぱり結構グンパツだということはわかった。 訓練しているかどうかはわからなかったが。 「おあいにく。見ての通り、ここには客人をもてなすような気の利いたものはございませんの。でもまあ、茶飲み話をしに来たって顔じゃありませんわね」 「単刀直入に言う。貴方に我々の組織に参加していただきたい」 大柄なラルカスが腰を折り曲げて言うのを見てマチルダは鼻で笑った。 「話が早いね。アンタの組織って言うとパッショーネかい?」 「よくわかったな」 「2メイル越えの巨体のメイジ。その上これだけ手の早い組織ってのはそうはないからねぇ」 ラルカスは2メートル強の巨体。 正確には2.5メートルはある肉体にの今はマントに包まれて隠れているが盛り上がる繋がった丸いボールのような筋肉は威圧感などを加え、見る者にはそれ以上の大きさに見せている。 そして巨大な斧。顔はフェイスチェンジで変えているためミノタウロスではないが、マチルダは逆に納得していた。 ミノタウロスのメイジという話の方が常識的ではないのだ。 自分が納得するような考え…例えば恐怖に駆られた者達が勘違いしたのだとでも考えた方が、納得が行くため…疑問には思わなかった。 「それで返答は?」 マチルダは肩を竦める。 「気が早い男は嫌われるよ。アンタ達が「余り時間が無いのでな。マチルダ・オブ・サウスゴータ。”レコンキスタ”アルビオンの貴族派が動いている」 かつて捨てることを強いられた貴族時代の名前を言われたマチルダの顔は蒼白になった。 マチルダもパッショーネがアルビオンの内乱前後に設立された事は耳にしていたが、まさか知っている者がこの世にいないはずの名前まで調べられているとは思わなかった。 「アンタ、どこでそれを?」 平静を装い、震える声で言うマチルダからラルカスは…正確には有無を言わせずにミノタウロスの体を乗っ取った地下水が視線を自分が降りてきた階段へと向けた。 亀をマチルダに放り投げ、受け取ったかどうかも確認せずに地下水はミノタウロスの体を走らせる。 「ちょっと! どこに行くんだい!?」 降りてきた階段から黒いマントを纏った人物が飛び降りた。 着地すると同時に既にその人物はラルカスへ長い魔法の杖を向けている。その一連の動きだけで、その人物が軍人だという事は理解できた。 教本通りだが、熟練した動き。地下水はじっくり仮面の人物を観察する。 白い仮面をつけており顔は伺えないが、余裕を見て取った地下水は笑みを浮かべているだろうと考えた。 エア・ニードル。杖が細かく振動し、高速で風が渦を巻きドリルのような形状を作り出す。 風で生み出されたドリルが迫ってきても、地下水は走る速度を緩めずに腕をかざした。 腕に当たる風に動じることなく地下水は斧を向ける。仮面の人物は驚いて一手遅れていた。 地下水の放つエア・ハンマーが、一瞬早く飛び退いた仮面の人物を打ち据え、階段を破壊しながら天井へと叩き付ける勢いで吹き飛ばしていく。 天井でプレスされるのだけは逃れたようだが、地下水は追わずに続けて錬金を行い今破壊した階段を塞ぐ。 エア・ニードルは、ラルカスの肉体にかすり傷一つもつけられずに消滅していた。 「今の威力、スクエアクラスか」 二人が一度敗北した『烈風』程かどうかはまだわからないが、地下水と地下水に体を乗っ取られたラルカスは仮面の人物の魔法の腕を理解した。 魔法の腕だけでもないことも…地下水は斧を握りなおした。 一手、相手に譲る。 ラルカスの体を得てからの地下水の得意の戦法。 ミノタウロスの肉体の強度を持って一撃目を合えて受け、大抵驚いて一瞬動きが止まるメイジを叩き潰す。 クリーンヒットせずともスクエアクラスの魔法は、相手に決して軽くは無い傷を負わせる。 だが、この仮面の男はまだ元気に動きまわっている。侮れぬ相手と地下水は受け取った。 「おい、敵か!?」 地下水の背中にポルナレフの声がかかる。 壊れた階段を閉鎖しながら、地下水は振り向いた。空中に浮かぶ亀に地下水は頷く。 「ああ。トリスティン貴族だと思うが、さっさと逃げるぜ。『土くれ』は?」 「今姉妹喧嘩の真っ最中だ」 地下水は返事を聞きながら、亀を懐に仕舞いその場から飛び退く。 直後に、二人が立っていた横の壁が破壊され、散らばっていく煉瓦の波の中から仮面の人物が現れる。 退きながらポルナレフのマジシャンズレッドが放った炎と炎が届く直前、どうにか間に合った風の魔法が衝突する。 仮面の人物に亀を見られはしなかったはずだが、どうしたものか…地下水は悩み始めたが、油断なく魔法の杖でもある巨大な斧を構え、自分の本体である剣が固定されている事を確かめる。 仮面の人物をトリスティン貴族と考えたのは男の動きがトリスティンの軍人、それも恐らくは近衛隊のものだったからだ。 長く傭兵として生き、ガリアの裏でも暗躍していた地下水の経験からしてそれは間違いない。 元貴族のラルカスとしては、この男と正々堂々とこの場で決着をつけたいという気持が沸いている。 『烈風』を今後乗り越えなければならない身としては、当然超えなければならないだろうという義務感に似た感情もある。 だが、こんな相手と戦うのは今回の任務ではないし、ここで時間をかけ騒音を聞きつけて学院の関係者が集まってしまうと不利だ。 テファをつれてリスクを負う気は無い。 今の手際を見れば、このまま逃げるのが容易ではないことは明白だが、任務は完了させなければならない。 地下水とラルカスは湧き上がった感情を抑え、逃げる手を考え始めた。 仮面の人物が杖を下に向ける。 「待て、私に争う気は無い」 「いきなり杖を向けてきて何言ってやがるッ」 「それについては謝罪しよう。我々には優秀なメイジが一人でも多く欲しい。協力してくれないかね?」 地下水は鼻で哂った。 冗談半分の軽い口調でレコンキスタのスカウトに返事を返す。 「貴様こそうちに来いよ。ボスはどんな素性の者でも受け入れる器量があるぜ」 「麻薬の売人如きで終わるつもりか。貴様も元は貴族、ハルケギニアの将来を憂う気持はないのか?」 再度尋ねてくる相手に地下水はうんざりしたような顔をする。 ラルカスは勿論、地下水にもそんな気持はなかった。 インテリジェンス・ナイフとして生まれた地下水にあるのは、この長い生をどのように生きていくかだけだ。 自分の肉体は無く、自分と同じ時間の流れの中を生きる物と出会うことは早々無い。 百年も立たぬ内に退屈になっていた地下水にとって興味があるのは、退屈をどう潰すかだけだった。 その点、ジョルノ達と行動する今は案外嫌いではなかった。 新しい相棒のラルカスの体を使えば今までに無いレベルで魔法を行使できるし、退屈はしない男だからだ。 ラルカスも同じだった。病に冒されていた頃に、既に国家への忠誠はどうしようもなく落ち込み、今はもうない。 だから仮面の人物に油断無く斧を向けながらこう答えた。 「下らんね。俺が興味があるのはどう生きるかだけさ」 ならばと、仮面の人物が纏う空気が張り詰めていくのを感じて、地下水は笑みを浮かべた。 * フーケが救出されようとしている頃、舞踏会に参加するはずだったイザベラは、まだ学院が用意した客室にいた。 本来なら舞踏会に参加していたはずだった。 トリスティン貴族の子女達を背景にパートナーとなった犯罪組織のボスとダンスをしたりするはずだったが… その予定は準備をしている途中で、突然の来客により崩れさっていた。 「ふむ…?可愛らしい娘ではないか。私は本当にどうかしていたらしいな」 「ほ、本当にどうされたのですか?」 イザベラの容姿をザッと上から下まで観察した美丈夫はうん、と大きく頷いていった。 今までそんな言葉をかけられた覚えがなく、戸惑うイザベラにジョゼフは苦笑した。 ガリアの玉座に座っているはずの、時間的には美食を堪能しているはずのイザベラの父親が、屈託のない顔で笑っていた。 「少し前からここ何十年かの記憶を失ってしまってな。ある方の薦めもあって戻ってくるのを待つより、こうして迎えに来た方が案外記憶を取り戻す良い切っ掛けになるのではと考えたのだ」 「記憶喪失、ですか…?」 戸惑いを隠せない娘に、ジョゼフは頭を下げた。 「うむ。これまでは冷たく当たってすまなかったな。許せ」 「え? は? なんで頭を」 呆気にとられたままのイザベラとジョゼフはそのまま、イザベラのことを根掘り葉堀り尋ねているうちに舞踏会は始まり、時間が過ぎた。 ジョゼフは本当に記憶を失っているかのように、色々な事を尋ねてくる父親が本当の事を言っているのかどうか、イザベラにはまだ判断が付かなかった。 だが、舞踏会が始まるその頃になってやっと、そんなイザベラも我に帰った。 「そうか…シャルルは本当に」 シャルルが死んだ時の事を尋ね、悲しげな表情を見せる父親の真に迫った表情。 照明に照らされ、目に涙の膜が張っていることに気付いたイザベラは、父親を疑っていた。 自分でしでかしたことを確認する無神経さには呆れたし、これまでのことを考えると、今のジョゼフは胡散臭すぎた。 誰だコイツ? どうやってイザベラの下へたどり着いたのかとか、色々な疑問もあったが、我に帰ったイザベラの頭に浮かんだのは違和感だった。 若々しい壮年の肉体はそのままだ。蓄えた髭なども。 だが、身分を隠すためか服装はラフだった。 この学院の生徒と大差ない、と言ってもいい。 公式の場意外では余り父と対面していなかったから、というのもあるが。 白シャツ。皮の手袋やブーツ…どれもイザベラが今までに見たジョゼフと比べると、飾り気の無い物だった。 装飾品と辛うじて言えるのは、(これをつけているからジョゼフだとわかったのだが)始祖から受け継ぐルビー位で他には腕にも首にも、何の宝飾もなかった。 杖さえ、一見して良い物とわかるが宝石の類は見受けられない。 それに明るく、陰りなどない表情は…まるで別人のようではないか。 自分の豹変に戸惑うだけでなく、ガリアにいる臣下。その中でも側近となる者達や愛人と全く同じ態度… 疑いさえ持ち始めた娘にジョゼフは気付き、ため息をつく。 人づてに聞いた自分とのギャップを考えれば仕方がないとはいえ、切なかった。 胸中で始祖ブリミルに祈りを捧げながら、ジョゼフは話を切り替え、初めて表情に陰りを見せた。 「そういえばお前が世話になったネアポリス伯や…シャルルの娘にも会わなければならないな。イザベラ、すまんが後で案内してくれないか」 「え、はい。父上」 「シャルロットが許してくれるとは思えんが、母親やオルレアン家のことだけは言っておかねばな」 肩を落として言うジョゼフにますますイザベラの疑念は増し、シャルロットとネアポリスという名前が異様な父親へ一つ尋ねさせた。 「父上、シャルロットをどうなさるおつもりですか?」 「無論正統な地位と権利を与えるつもりだ」 「馬鹿なッ…父上、それは」 「危険性については理解している。シャルル派を名乗る者どもが勢いを取り戻すことも、私がシャルロットに殺されることもない」 断言するジョゼフにイザベラは心の中で毒づいた。 ジョゼフの口ぶりからすれば、そうなるように既に準備が十分に済んでいるのだろう。 そうした手腕に関してはジョゼフは天才的と言ってもいい手腕を誇っている。 でなければ暗愚と呼ばれながらも王を続ける事など不可能なのは、イザベラが一番良く知っていた。 アンタはいいかもしれないけどそれじゃこっちは困るのさ! イザベラがシャルロットを味方に引き込むためにはシャルロットは不幸なままがいいのだ。 今の不幸な状態ッ、ジョゼフが完全にシャルロットと敵対している状況が凄くいいのに! ジョゼフの言う事が本心であれ、何か思惑があるのであれ…謝罪や協力などを求める手紙は、既にシャルロットに出してある。 だが今のジョゼフの言い様からすると、シャルル派の貴族達が揃ってバックにつきシャルロットはシャルロットだけでジョゼフに対抗しようとするかもしれない… 利を考え始めたイザベラにジョゼフは気付いたが、何も言わずに悪戯っぽい表情を作ると部屋に来る時持ってきた大きな箱をイザベラに示す。 「…フン。ところでイザベラが置いて行った使い魔を念のため連れて来たのだが…」 ニヤリとするジョゼフに、イザベラは顔を青くした。 視線を父親が持ち出した金属の箱へと固定して、震える声で尋ねる。 「あ、アイツをですか…!?」 「使い魔とメイジは共にいるものだろう?」 「ですが…アイツは」 当然のことを言うジョゼフにイザベラは口を濁し、ジョゼフが持ち込んだ箱を今度は視界にいれないようにする。 箱の中にいるであろうイザベラの使い魔は…イザベラに劣等感を抱かせる要因の一つでしかなかった。 始めは、喜んだ。 イザベラが数年前に召喚し、未だ衰える気配を全く見せないそいつはハルケギニアでは見ない、新種の鳥だった。 だがソイツはイザベラを使い魔の分際で見下ろしてくる。それが気に入らなかった。 そして、シャルロットが竜を使い魔としてからは、鳥さえ御する事ができない自分を否応なしに比べてしまう…見たくは無い物へと変わっていた。 その時、箱の内側から氷が突き出た。イザベラは悲鳴を上げ、身を竦めながら距離を取っていく。 ジョゼフは逆に好奇心で目を輝かせ、固定化をかけた金属を容易くぶち抜いた氷の鋭い輝きや、その奥から覗く猛禽の目を眺めていた。 金属製の箱をあっさり破壊した氷が砕け、中から一匹の隼が飛び出す。 軽く羽ばたきその体が宙を舞う。 「ペットショップ…」 何か予感めいたものを感じてジョゼフに従い、今勘にしたがって飛び出したペットショップは窓をこじ開けて外へと飛び立った。 一応は主人であるイザベラが後を追ってレビテーションを唱えているのはわかったが、気にも留めなかった。 レビテーションを使えないジョゼフが置いてきぼりを食らった事もどうでもいい。 翼の形状から、頻繁な旋回・方向転換などは不得意であるはずだが、悠々と旋回を繰り返し学院の建物を出たり入ったりして、灯りの近くを移動する。 ニワトリのように夜盲症ではないので、月が二つ輝くハルケギニアの夜はペットショップには十分な明るさだった。 着飾った人間達を見下しながら、ペットショップは自分が召還された時の事を思い出していた。 ペットショップが召喚されたのは、主人の屋敷をかぎ回る糞ったれな犬(イギー)に敗れた直後だった。 最早ペットショップの命の灯は消えかかり、傷ついた体は死体一歩手前だった。 だがガリア王宮の優秀なメイジ達はそんな彼を奇跡的に治療してみせた。 弱っていた自分にキスをした幼いイザベラの顔を使い魔のルーンが刻まれる焼け付く痛みと共にペットショップは今も記憶に止めている。 それから数年の月日が流れた今も。 だが何故か殺す気にならず、それを不思議に思わず主人であるDIOの下へ戻っていない。 命を助けられたから恩義を感じている、というわけではないのは自分のことだからわかる。 そんな殊勝な心がけはペットショップには存在しなかった。 それは使い魔のルーンの効果だったが、ペットショップはそれに気付く事は無かった。 時折頭に浮かぶ違和感を振り払いペットショップは学院の周囲を飛ぶ。 本来なら老衰で死んでいてもおかしくない年齢だったが、そんなことは無視した若鳥のような力強い動きではばたいていく。 目が忙しなく周囲を探り、何かを探していた。 ペットショップにも何を探しているのか明確にはわかっていなかった。檻の中で感じた奇妙な、予感を求めていた。 そしてペットショップは一人の人間に目を付けた。 人間が多く集まる会場から抜け出していく人物にペットショップは羽ばたきも極力押さえて、ゆっくりと近づいていく。 主人とは違う鮮やかな黒髪だったし、体つきも柔だ。 だがその華奢なボディや立ち振舞いに、ペットショップは微かに同じ匂いを見た。 注視する間に何処かへ向かう人間の首筋が見えた…首の付け根にある星形のアザが目に入った。 ジョゼフについてガリアを出る前に出会った男の言葉が頭に浮かんだ。 男はあっという間に、それこそチャームの魔法でも使ったかのようにジョセフと親交を結び、貴族達も恐れるペットショップの視線を受けながら、リラックスした体勢で笑みを浮かべてこう尋ねてきた。 『ペットショップ。君は引力を感じたことはあるかね?』 人間はいつのまにか立ち止まり、首だけ振り向いてペットショップを見ていた。 口元には薄く柔らかな微笑がある。爽やかな笑みだったが、声は不思議と心地よかった。 「よければ、僕と仲良くしないか?」 ペットショップは、当然のように人間が差し出した腕に止まった。人間の背後に力あるヴィジョンが一瞬見えた。 人間を背後から抱きしめるようにする黄金に輝く優美な像と、その頭に腕を置く主人のスタンドの像を。 間違いなく、人間は主人の血統に違いないと、ペットショップは確信した。 「ジョナサン!」 ペットショップを腕に止めたまま、生命エネルギーを頼りにラルカス達のいる場所に向かおうとしていたジョルノは足を止めた。 今出会ったばかりの鳥と共に声の方へと視線を向けた。重力を無視してゆっくりと青い髪の女が降りてくる。 「クリス?」 振り向くとドレスアップしたイザベラが着地していた。 レビテーションかフライの魔法で鳥を急いで追いかけて来たのだろう。 今宵の舞踏会のために時間をかけて結った髪が少し乱れていた。 「…もしかして貴女の使い魔ですか?」 「そうさっなのに…いや、何でもないよ。さ、戻るよペットショッ」 連れて行こうと手を伸ばしたイザベラは、ペットショップが自分に敵意のこもった視線を向けていることに気付いた。 それどころか、その周囲が歪み、冷たい空気が流れ始めているのをイザベラは感じていた。 忌々しい気持が浮かんだが、それをグッと堪えてイザベラはジョルノとペットショップを見る。 今日ジョルノに言われたばかりの言葉が頭に浮かんでいた。 自分に、いや誰にも従わなかったペットショップが、何故だかジョナサンに懐いているように見えた。 …自分で使えないのなら。 当然のように腕に止まりイザベラを冷たく見つめる使い魔の目を眺め、思案顔で考えたイザベラは口の端をもちあげる。 「案外いいかもしれないね。ペットショップ、アンタ…ジョナサンを助けてやりな。私の、じゅ、重要な仕事を任せてあるから、目を離すんじゃないよ」 「いいんですか?」 ペットショップに詰めより言い聞かせるイザベラにジョルノは不思議そうに聞いた。 メイジと使い魔はどちらかが死ぬまで共にいるパートナーだという風に、何かの本でジョルノは読んでいた。 それはこの学院の学生が以前ジョルノも生み出した事のあるジャイアントモールに頬づりしていたことなどを見てあながち間違っていないと思っていた。 それをあっさり手放すイザベラが変わっているのか、未だジョルノには正しい定規がなかった。 微かに顔を赤くしてイザベラはそっぽを向いた。 灯りの方を向いたので、横顔ではあったがより表情がよく見えるようになったのだが、そこは指摘せずにジョルノは礼を言う。 「ありがとうございます。彼はペットショップというんですね」 「そ、そうさ。コイツの視界を通し私はアンタを監視できるんだから、これからはサボれないね!」 少し冗談半分にイザベラは言った。 視覚や聴覚を借りる事はできるが、どの程度の距離までそれが行えるかどうか、イザベラも正確には把握していなかった。 「(一方的になってしまいますが)僕から伝たいことがあれば、すぐに貴方に伝える事ができるようになりますね。後で時間を決めておきましょう」 ジョルノもそれには気付いていたが、一方で可能という事になれば、うまくやれば情報伝達を素早くできるかもしれないとジョルノは少し期待していた。 浮遊大陸であるため、飛行船などでよく使われる風の力を秘めた風石の利用がうまかったアルビオン出身のギャング達を中心に技術を再現できないかと電信等を研究させているが、国家間で通信を行うような段階ではない。 ポルナレフが毎日頼んでいた携帯電話で出前、なんてことをやるのはまだまだ無理な話だ。 「わ、わかってるじゃないか。私もそういう使い方を期待してたのさ」 だから伝書鳩や人手による通信を強化していたのだが、離れている使い魔を使って通信を行うという使い方はありかもしれない。 何より他人にはわからないという点が素晴らしい。 どの程度の距離まで使えるかはわからないが、それで1kmでも縮められたら積極的に採用しようと考えながら、嘘っぽいイザベラに礼をいう。 そしてジョルノはペットショップと共にラルカス達の元へと向かう。イザベラに再び背を向けた時既にその目はペットショップが惚れ惚れするような冷酷さを宿していた。 イザベラは急ぐジョルノの背中に手を伸ばしたが、何故か気圧されて声をかけることができなかった。 人気の無いところまで来た時点で、ジョルノは亀を生み出しそれをペットショップに輸送させるという手を取った。 先程から忙しなく生命反応が動いていた。レコンキスタか学院関係者との戦闘に入っているらしかった。 急いでいけば、まだ間に合うかもしれない…ペットショップが足に掴んだ亀の中で、ジョルノは車のシートで寛ぐようにソファにもたれかかり足を組んだ。 * その頃ポルナレフ達は、学院を脱出し周辺にある森の中へと逃げ込み、呼吸を整えていた。 あの場所でアレ以上戦いを続けていてはいつ学院の関係者達がやってくるとも知れない。 そう考えた地下水は逃走し、森へと逃げ込んだ。 人の手が入らない森はうっそうと茂り、二つの月が放つ光を遮る。 植物の枝葉が重なり合い、夜行性の動物達が徘徊する世界は人間の目では暗闇にしか映らないだろう。 だが、仮面の人物はそこに逃げ込んだ地下水を風の動きを頼りに位置を掴み追いかけてきた。 だから地下水はその人物を今、仮面の人物をエア・ハンマーで砕いていた。 ラルカスの肉体を使った地下水のエア・ハンマーは容易に人間を破壊する事ができる…が、杭のように地面に打ち付けられた仮面の人物の死体は無かった。 ラルカスと同じく、敵も遍在を使っていることに気付いていた地下水は特に驚くことも無く鼻を鳴らした。 何故わかったかといわれると返答に困るのだが、何度も使用してきたからか、なんとなく実体かどうかわかるのだった。 思っていたより手強い相手だった。 鍛えられた肉体、スクエアクラスと思われる魔法の腕と、軍人達が使う戦闘に特化した詠唱方法。 詠唱の技術や体捌きはラルカスや地下水より洗練されていた。 だがどれほど鍛え上げようとミノタウロスと人間の差はその程度では埋まらなかった。 生半可なエア・ハンマーやニードル、カッターでは、主要な風の魔法の殆どは、ミノタウロスの皮膚を貫く事は出来ないのだ。 地下水は斧を振るい、錬金で作り出した避雷針を消す。 エア・ニードルを防いだ自分に何を使ってくるのか。 地下水はライトニング・クラウドを警戒し、敵が放つ瞬間に身代わりを用意したのだった。 それはラルカスの発案だった。 烈風に負ける前のラルカスでは、思いつかなかったかもしれないと地下水は考え…ラルカスに体の主導権を返す。 ラルカスは安堵の息を吐き、亀の中にいるはずのポルナレフに、途中から戦闘を全く手伝わなかったポルナレフに険のある声を出す。 「ポルナレフさんよ。アンタさっきから何やってんだ? アンタも手伝ってくれればこんな冷や冷やしなくてすんだんだぞ」 だが返事は無い。 ラルカスは少し不機嫌になり、ぶっきらぼうに言う。 「ポルナレフ。姉妹喧嘩はどうなった?」 そう尋ね亀を覗き込んだ瞬間、中から伸びてきたゴーレムの手が、ラルカスの首を掴んだ。 「ッ?」 「アンタのボス…いいや、あのクソガキのところに私を案内しな」 中から聞こえてくる声は、地獄から響くような怨念めいたものが感じられた。 少し冷や汗を垂らしながらラルカスは中を見る。 …き、貴婦人に手をあげるのは紳士としてやっちゃいけませんよね? 亀の中の部屋では、同じようにポルナレフがゴーレムに捕まっていた。 そして、説明をしているテファがいて、かなり危険な目をしたフーケと目が合った。 「何してるんです?」 「ボス、アンタいつきたんだ?」 ラルカスはゴーレムの腕を握りつぶし、周囲に目をやる。 見覚えの無い鳥が同じように周囲を警戒している姿が目に入り、ラルカスを見下ろす冷徹な瞳が合った。 「今です。ペットショップに運んでもらいました」 「…アンタに話があるらしいぜ?」 いつのまにか背後に立っていたジョルノへ哀れむような目を向けたラルカスの姿が消える。 遍在を解除し、この場から逃走して舞踏会などに専念する事にしたらしい。 ペットショップが警戒していてくれるので、ジョルノ自身は余り警戒せずに亀の中へと入っていく。 腕を組み、親の敵のように睨みつけてくるマチルダへジョルノは笑みを浮かべたまま礼をする。 「…お久しぶりです。マチルダさん」 「ジョルノ…アンタ、覚悟はできてんだろうね?」 「姉さん、ジョルノは悪くないわ。ジョルノは姉さんとゲルマニアに行けって言うの。でも…」 ドスの効いた声を出すマチルダに、慌ててテファが説明する。 だがマチルダは可愛い妹を一瞥しただけで、面白くなさそうにジョルノへ視線を戻す。 To Be Continued...
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トリスティン魔法学院から父王と共にイザベラが帰国してから幾らかの日数が過ぎた。 元々偽の名前で訪れる予定であり、ジョゼフも非公式での訪問だったため気にかける者は殆どいなかった。 それよりも去っていくイザベラと仲睦ましげに別れの挨拶を済ませたネアポリス、ジョルノの方へ注目が集まっていた。 仔細までは学院と言う特殊な場で生活する貴族の子女達にも知らないが、多種多様な事業を展開し利益を上げて噂になった貴族が、自分達とそう変わりない年齢だという事の方が素性を隠している貴族よりも生徒らにとってインパクトが強かったのだ。 ヴァリエールの使い魔だったはずの亀と親しくし、平民にまでわけ隔てなく接する成り上がりをプライドの高いトリスティン貴族の子女が無視できなかったとも言えるのかもしれない。 何故ヴァリエールの亀と親しいのか、疑問に思う声も囁かれる食堂の中を抜けてルイズはテラスでタバサとサラダを食べているジョルノの元へ歩いていった。 同じテーブルに着いているのは先日ルイズと共にフーケ討伐に向かったタバサと、平然とサラダを食べるジョルノから目を背けるラルカス、ジョルノを唖然とした表情で見るテファの三人だった。 ポルナレフがいなくてホッとしたが、逆にどこにいるのか少しひっかかりを覚えたルイズは、彼らの顔つきを見て内心首を傾げた。 天気もよいし、適度に風が吹いていてとても気持良さそうな空間にそぐわない態度は奇妙に感じられる。 だが妙に思ったルイズは、接近に気付いて顔を上げたジョルノが持つフォークに刺さるはしばみ草を見て、心で理解した。 はしばみ草…極々一部の愛好家がいるのは認めるが嫌いな野菜ナンバー1の座を数千年独走し続ける野菜の王様が、朝日に照らされて口の中が苦くなりそうなその姿をルイズにこれでもかと主張していた。 「お、おはようございます。伯爵…朝からはしばみ草なんて、ヘヴィ過ぎません?」 「おはようございます。馴れてくると独特の味が癖になってきます。栄養は満点ですしね」 ジョルノの返事と、何気に隣に腰掛けているタバサがわかったような顔で頷くのを見て、ルイズはげんなりした。 だが用件は済まさなければならない。ルイズは許可を求めてからジョルノの正面に腰掛けた。 朝の清清しい空気を胸いっぱいに吸い込み、真剣な表情で見つめる。 「伯爵「ジョナサンで構いません」…ジョナサン。貴方は舞踏会の夜、私の系統について心当たりがあるとおっしゃいました」 舞踏会の夜の事を思い出しながら、確認するように言うルイズにジョルノは頷いた。 ルイズの系統は恐らく始祖の系統だと舞踏会の夜ジョルノはルイズに告げた。 伝説の系統がゼロと蔑まれてきた自分の系統であるという話は、到底信じられない話だった。 ジョルノ以外が言ったら一笑に付していただろう。 だが、ジョルノは家族以外は…家族さえも諦めていたカトレアを治療してのけた男だった。 だから肩にとまる小鳥という形で自分の使い魔との関係を一方的に清算したルイズは、ジョルノに話を聞きに来た。 ルイズは同じテーブルに着く者達をチラッと見て言う。 「それについて詳しくお聞きしたいんです。お時間をいただけませんか?」 「彼らがいても良いのでしたらこの場でお話ししましょう。お嫌なら今晩か明朝、学院の中庭でなら時間を作れますが」 「…その、この方達に一旦席を外していただくことは」 「ルイズ。先日までの貴方ならそうしてもよかった」 残念そうに言うジョルノは、唇についたサラダのドレッシングの油をハンカチで拭い、ルイズの肩にとまる鳥を見る。 「だが、タバサ達の方が先約だし、その使い魔を選んだ貴方の為に皆に紅茶を持って向こうに行ってくれとは言えません」 「ぅ…わかりました。今夜、中庭ですね」 反論しようとするルイズに首を横に振ったジョルノは既に頼んでいたらしいメイドが持ってきた紅茶を付け取る。 ルイズは唇を噛みながら席を立とうとする。 だがそれより先にタバサが席を立った。 「飲み終わったから、私は向こうに行く」 「わ、私も…向こうに行ってるから。ルイズさんとゆっくり話して」 続いてテファが立ち上がったのを見て、ラルカスも仕方ないなと言いたげな仕草をして立ち上がる。 「じゃあ私も今のメイドをナン「少し遅れますのでかわりに仕事をしておいてください」…いえすさー」 ラルカスにだけ釘を刺して、錆び付いた飾り気の無い剣を手渡すジョルノを見ながらルイズは心の中で彼女らに礼を言った。 肩にとまった小鳥を撫でながらルイズは席に座りなおす。 それを待って、ジョルノは口を開いた。 「呪文を覚える方法は始祖の秘宝を手に入れることです」 「始祖の秘宝?」 「ルビーとそれ以外の宝です。この国にあるのは水のルビーと始祖の祈祷書ですね」 テファの名前は伏せたまま、テファから聞いた話から推測した事をジョルノはルイズに説明していく。 ルビーをつけてオルゴールを開けた時にテファは忘却の呪文を覚えた。 王家に伝わる秘宝とか…テファが言っていたので調べてみた所、それは二つとも始祖の秘宝でありルビーと呼ばれる秘宝は他の王家にも引き継がれていることが確認できている。 三人の子供と一人の弟子が開いた四つの国にある四つのルビー。 テファが歌った歌… "神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。 神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。 神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。 そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……。 四人の僕を従えて、我はこの地へやってきた……。” 歌を裏付けるように先日ロマリアの枢機卿からは、始祖は己の強大な力を4つに分け、秘宝と指輪に託しました。また、それを託すべき者も、等しく4つに分けたのです。 その上で、始祖は「四の秘宝、四の指輪、四の使い魔、四の担い手……、四つの四が集いしとき、我の虚無は目覚めん。」 そんな言葉を残していると教えてもらってもいた。 話を聞かされたルイズの方は、ジョルノが情報の入手経路などを隠したせいで半信半疑だった。 自分がそうであるかさえ疑っているというのに、虚無の担い手は他にもいる可能性があるなどといわれても信じられるわけが無い。 それを察したジョルノは奇妙なことだが、ルイズをまるでちい姉さまのように安心させる声で言葉をかけた。 「半信半疑なようですね」 「失礼ながら…それに始祖の秘宝なんて私が持つ機会は…」 ルイズの家は王家とも血の繋がりがあり、このトリスティンでも有数の貴族だが王家ではない。 その上ただの学生であるルイズに王家の秘宝に触れる機会が生涯を通して存在するかどうかといえば、限りなく低いとルイズは考えていた。 だがジョルノは「既に半分はクリアできる状態です」と告げた。 「今の状況が続けば恐らく貴方が祈祷書に触れる可能性は十分にあります。ルビーに関しては私に心辺りはありますが…」 「今の状況って、どういう意味でしょうか?」 理解が追いつかないまま尋ねるルイズにジョルノはすぐには返事を返さなかった。 少し考える様子を見せ、他人には聞かせられないということをわざわざ周りに人がいない事を確認してルイズに伝えながらジョルノは少し声を潜めた。 「(これは内密な話です)ゲルマニアの皇帝とこの国のアンリエッタ王女が結婚する話が進んでいるからです」 「なんですって!?」 ある意味ルイズが虚無であると言う事以上に突拍子も無い事を聞かされたルイズは、激怒して席を立ち上がった。 アンリエッタ王女は先の王が忘れ形見であり、民衆の人気も高く「トリスティンの可憐な花」など彼女を称える言葉は限りない。 対してゲルマニアの皇帝は、ゲルマニアを野蛮な国と蔑むトリスティン貴族にとってはゲルマニアの皇帝と言う時点で既にありえない。 しかもそのお相手であるゲルマニア工程と言えば、権力争いの末に親族や政敵をことごとく塔に幽閉し、皇帝の座に就いた40代の男なのだ。 「私をからかっているの…!? 姫殿下が」 怒りに染まった表情で顔を寄せてくるルイズの口を押さえ、ジョルノは座るように言う。 「声を抑えて座ってください。この国の伝統で王族の結婚式には貴族より選ばれた巫女が『始祖の祈祷書』を手に式の詔を読み上げる習わしになっています」 「だから…! どう「同じ事を言わせないでください。次に大声を上げたりしたらこの話はここまでです」…ッわかったわ。だから教えて。どういうことなの?」 低い声で言われ、ルイズは周りを見る。 大声を上げたルイズに食堂から視線が集まっていた。 悔しそうな顔でルイズは席に座りなおす。紅茶を飲みながらジョルノはその事についても説明を始めた。 アルビオンで起きている内戦は貴族派の勝利で終りそうな事。 次はトリスティンに攻め込む可能性が限りなく高く、トリスティン一国ではそれを防ぐ手立てはないということ。 自分の魔法のことなどどーでもよくなるような事を淡々と説明するジョルノに、ルイズの血の気は引いていった。 アルビオンで戦争が起きていることは知っていたが、王家への忠誠心が厚いルイズは王党派が勝利すると考えていたし、 所詮は対岸の火事として、既に過ぎ去った話題に過ぎなかった。 どんな状況になっているかなんて気にも留めていなかった自分をルイズは恥ずかしく思った。 ルイズは昔、アンリエッタの遊び相手だったことがある。 その頃の思い出は今もルイズの小さな胸の中で輝いているのに… 「そういうわけですから、今はあの爆発を上手く使うことを考えてはどうでしょう?」 ルイズがアンリエッタの事を考えている間もジョルノは説明を続けていたらしく、我に返った時には最後に締めくくる言葉を告げられていた。 自嘲気味な笑みがルイズの顔に浮かんだ。 「上手に使うですって? 失敗して爆発してるだけじゃない…!」 「仮にそうだったとしても、貴方は爆発について良く知るべきだ。モノは使いようです。全ての魔法で全く同じように爆発するのか。爆発する場所は指定できるのかなど…細かく特性を調べることです」 「そんなこと言ってる場合じゃないわ。姫殿下の為に何かしないと…何か、できることは無いのかしら」 自分の悩みなど忘れたように言うルイズに、ジョルノは首を振って個人の力でどうこうできる問題ではないと忠告する。 今のルイズの力では及ぶはずもない。 「ですが彼女は今度この学院に訪れる事になっています。貴方が彼女の友達であるなら、彼女の心を慰める事はできるかもしれない」 「姫殿下がこの学院に?」 「急な訪問らしく、今日の午後にはオールド・オスマンの所に連絡が届くはずです」 言葉の端々からルイズを気遣っているんじゃないかという気がしたが、ルイズは眉をよせて怪訝そうな表情を作っていた。 自分が知らない情報を幾らか知っているのは、既に一人の貴族として大人達に交じっているジョルノなら当然かもしれない。 だが、王女の今後の予定まで知っているものだろうか? 「…貴方、何者? 姫殿下の予定まで知ってるなんて」 「情報を集めるのは商売の基本です。それよりもルイズ」 得たいの知れなさから疑いを持ち始めたルイズを見つめ、ジョルノは言う。 「ここまで話したのは、貴方だからです。軽々しく他人に話さないと信じて構いませんね?」 「も、勿論よ。私は貴族よ? 軽々しく他人に話したりなんてするわけないじゃない」 静かな口調に何故か気圧されるものを感じながらルイズは返事を返した。 一つ頷き、ジョルノは予定が詰まっているからと席を立つ。 去っていくジョルノを目で追いながら、ルイズは好きでもない相手と結婚させられるアンリエッタと何年も連絡の無い、親が決めた婚約者のことを思い出していた。 ルイズと別れたジョルノはテファ達と合流して、その日は勉強をした。 テファ達が組織に参加することが決まってしまった以上、何か仕事を振らなければならない。 だが今もっている技能だけで参加してもらう気はジョルノにはなかった。 まずは地球の学問を学んでもらう。マチルダ程の土のメイジが地球の学問を習得すればどうなるかを考えると楽しみだった。 幸いというか、ジョルノの亀の中には図書館ほどの蔵書がある。 そんなものがあるのは仲間の死を引き摺っていたフーゴが発端だった。 一度仲間から抜けてしまったが、フーゴの頭脳はジョルノ達に必要だった。 暗殺チームを失い、ペリーコロが自殺。親衛隊などにも多数の死傷者が出たパッショーネの為にフーゴは力を尽くしてくれた。 ある時そんなフーゴが、その途中必要になっていくだろうと勉学に勤しみ始めたと聞き、ポルナレフとミスタの音頭で強力に支援してみたことがあった。 だが、結果はこんなにいらないと断られ死蔵することになった…ジョルノもある程度個体差があるとはいえ亀数匹を犠牲にしても余る量を発注した二人を見た時は頭がどうかしたのかと思ったものだ。 幹部になり突然大金を持ったからと言って調子に乗って無駄遣いしちまったらしいが…煽てられて買わされるにも限度があるだろう。 こちらに着てからはそれが案外役に立っている。 別の場所で何人かの手で訳書も作成させているのだが…話が逸れたが、要するにジョルノとしてはマチルダにはコルベールや既にネアポリス領内に集まっているメイジ達と合流し、研究を行って欲しいと考えているのだった。 そしてテファには政治や経済などを学んでもらいたいと考えていた。 「テファ、貴方は政治や経済を学んでれると助かります。余りにもできないのも困りますからね」 「が、頑張るわ」 「僕の所に来る文書にもある程度は目を通してもらう事になります。教師役は、今はラルカスにお願いしましょう」 ラルカスは頷くが、内心はちょっと面倒だったりもする。 何せ現場に出て勢力を拡大したり統治したりもしているし、ネアポリス領内で優秀な水のメイジとして研究にも参加している。 地下水と交代できるとはいえそれなりに忙しいのだ。 だがまぁ、目の保養になるからいいか、とラルカスは安請け合いした。 「だが、いいのかボス。イザベラ様の教育係に既に頭の回るのを一人振ったのだろう?」 「イザベラ王女を味方にすることには、それだけのことをするメリットがあります。二番手三番手だった者達に発破をかけ、ジョゼフ王が潰した元貴族達を更に集めさせて対応します」 「恩を売るだけなら他の奴でもいいと思うがな。アイツきっとイザベラ様の鼻っ柱叩き折る所か砕いて塵も残さんぞ」 「それでいい。そこから這い上がってきてこそ、信頼できる」 「アンタ、ガリア王女にも手を出してんのかい?」 そうかいとラルカスがため息をつく間にマチルダが剣呑な声を出したが、ジョルノはええ、と返事を返し話を続ける。 普段ならというか、これまでこんなことを話したことはなかったのだが、テファ達が加わり近況は知らないポルナレフがいるのだから仕方がなかった。 眉を寄せるマチルダの前にポルナレフは何も言わずに酒を置く。 何も言わずに一気に飲み干すと、マチルダは二杯目を要求した。 「話を続けますよ。先日、打診していたヴァリエール家などから協力を取り付けましたので、ネアポリス銀行を開く目処が立ちました」 「はぁっ?」 聞くことに徹しようかと思っていたポルナレフは、ジョルノの突拍子も無い発現に耳を疑った。 「ジョルノお前、そんなことまでやる気かよ。てっきり俺は…」 「飲む、打つ、買う。では市場規模が小さすぎるんですよ。僕の目的を果たすにはとても足りない」 「目的? ギャングになるってことじゃねぇのか?」 「それは夢の話です。ゲルマニアの工場などは稼動していますし、各国の商会も順調に成長していますが…研究にもお金がかかりますからね。そろそろもう少し手を広げておきたいんですよ」 「だからって…上手くいくのかよ?」 ポルナレフは幾らなんでも無茶だろと考えているようだが、ジョルノは力強く頷いた。 ゲルマニアには多額の金を抱える者が出てきている。金を手元に抱え込むリスクを懸念した金所有者から既に預かり始めてもいた。 「…商会?」 「はい。アルビオンの戦争で儲けるには必要でしたからね。思ったより長続きしてくれたお陰でそれなりの利益はでました」 「えげつない真似したんじゃねーだろうな?」 「ええ。誠実に商売させていただきましたよ。いい取引ができました」 どちらとも取れる返事を返すジョルノに業を煮やしたポルナレフはラルカスに視線を送る。 ラルカスはそれを予想していたのか、既にポルナレフに触れない方がいいという意味を含んだ生暖かな視線をポルナレフに送り返していた。 ちょっぴり買い占めて値段を吊り上げる位当たり前と考えていたっておかしくはないと、ラルカスは思っていた。 「戸籍が怪しい者もいますが、回収は最悪パッショーネを使います。ゴールド・エクスペリエンスで生み出した植物の栽培を始めた貴族も多数いますから需要はあります」 クンデルホルン大公国からは睨まれそうですが、とジョルノは肩を竦めて言う。 二人の会話にテファ達はついていく事ができずにいた。テファがジョルノの手を引く。 「ジョルノ。銀行って?」 首を傾げるテファの反応はもっともだった。 ハルケギニアではまだ銀行という概念が無い。 貴族達が借金を申し込む相手は、クンデルホルン大公のように金を持った貴族だし、ようやくゲルマニアで溜めた金を奪われる懸念ができる者達が出てきた程度だ。 一言で言えば預金の受入、資金の移動(決済)や貸出(融資)、手形・小切手の発行などを行う金融機関と言うだけでは済まないだろう。 だからジョルノはとても簡単に言う事にした。 「とても簡単に言うと他人からお金を預かって、それを必要としている他人に貸してあげる仕事です」 「そう…他人の役に立つ仕事なのね」 「勿論です。ちょっぴりだけ貸したお金に利子をつけて貰ったりしますけどね」 払えなかったら担保も頂くし、逃げたら逃げたでパッショーネの怖いお兄さん達がやってきて逃げる気がなくなる程度に体で払ってもらう事になるでしょう…メイジはいい労働力になりますからね、とはジョルノは言わなかった。 貸す時には勿論、肉体の一部は徴収しておく予定なので、最後には捕まえられるだろう。 まだテファには言わなくてもいいだろうと考えたからだが…言わなくても、マチルダ達には伝わったらしく引きつった顔をしている。 ポルナレフはもう何か、悟ったような顔にも見えたが。 その視線に不服そうな態度でジョルノはその後も日が暮れるまでテファ達の教師役と普段通りの仕事をこなしていった。 夜になり、日中悩んでいたルイズは学院内を歩いていた。 授業中ずっとジョルノに言われた事を考えていた。 お陰で既に舞踏会などのイベントも終わり、引き締めを行おうとする教師達の目にはばればれで軽い注意をされてしまった。 アンリエッタの為にすぐになにかがしたいという気持ばかりが逸り、眠れそうになかった。 「こんな時にいれば話相手位にはしてあげるのに。まったく、どこほっつき歩いてるのかしら?」 既にポルナレフはジョルノの所で寝泊りしている。 別にまだルイズのところにいても構わなかったのだが、小鳥が着てから同じ部屋にいるとちょっぴり切ない気分になるからだった。 この場にいないポルナレフをなじりながら、ルイズは歩いていく。 その足が女子寮を抜けても止まらずに、学院の本塔へと向かい始めた時だった。 ルイズは中庭で動き回っている影を見つけた。 不審者かと思い、ルイズは身を隠そうとしたが、それが誰かはすぐに判明した。 それはジョルノとサイトだった。 二人共重そうな荷物を抱えて、走っている。 ジョルノから離されているらしいサイトは今にも死にそうだったが、ジョルノも辛そうにしていた。 そこから少し離れた所に、ポルナレフの亀がいた。 少し躊躇ってからルイズは彼らのところに歩いていく。 足を止めかけたサイトが、ルイズに気付き声を出そうとしてむせ返る。 「ん? …ルイズ」 「ポルナレフ…こんなとこでなにやってるの?」 「あ、ああ…サイトの奴が体力が無いんでな。少し鍛えてやってるんだ」 微妙な態度のポルナレフに、ルイズは不機嫌そうな言い方をする。 「伯爵もおられるけど?」 「アイツはこっちに来る前からやってたみたいだがな。理由は知らん」 ジョルノを見てみると、背中に荷物を手にも何か抱えてまだ走り回っていた。 なぜかその姿は何かを振り払おうとしているように、ルイズには見えた。それが何かはわからなかったが。 サイトがまだむせているのを見てポルナレフが声を出した。 「サイトッ! 今日はもう上がっていいぞ!」 「う、うぃっ…ウッ」 『サイト! 頼むから俺の体にだけは吐くんじゃねぇぞ!?』 急に運動をやめた反動か苦しそうにするサイトにポルナレフはため息をつく。 「あのみすぼらしいの、もしかしてインテリジェンスソード?」 「ああ、デルフって言うらしい。なんか用があったらしいんだが、物忘れが激しくて使い物になりそうになかったんでな。俺が無理言って借りた」 錆びた長剣は柄をカタカタ鳴らしながらサイトに話し掛けているが、サイトの方に返事を返す元気はないようだ。 ポルナレフはそれを見て苦笑を漏らしたような調子で続けた。 「案外気もあうようだし、サイトの教師としちゃ悪くないさ」 「ほっといていいの?」 「サイトの野郎はほっといても大丈夫だ。直にシエスタが来るからな」 「シエスタ?」 「学院のメイドだ。困ってるサイトを助けてくれてからの仲らしいが、結構お似合いなんだぜ?」 ルイズは返事を返さずに自分の使い魔になるかもしれなかった平民を見る。 今朝ジョルノに、その事で咎められたことが思い出される。 確かに、貴族として余り褒められた事じゃないと思ったが、仕方ないじゃないと自分に言い訳をして視線を外した。 ポルナレフの言うとおり、メイドがやってきてサイトを世話しているせいか…余り酷い状態でもなさそうなので罪悪感は幾らか薄れた。 「…使い魔のことだが、俺は気にしちゃいないぜ」 「な、何言ってんのよ。誰もそんなこと言って無いでしょッ」 「そうだな。だが、なんか俺の手が必要な事があったら言ってこい。俺はコレでも腕には覚えがあるからな」 少し寂しそうに言うポルナレフを見ないように、ルイズは走るのをやめ虚空に向かって殴ったり蹴ったりしているジョルノを見る。 ルイズにスタンドが見えれば、そこにジョルノに関節技を仕掛けようとするマジシャンズ・レッドの姿が見えただろうがルイズには見えなかった。 勿論本気でやったら生身のジョルノなんぞ軽く捻れるんである程度加減はしていたが。 「調子に乗りすぎよ。あ、アンタはもう私の使い魔じゃないんだから余計な事は考えなくっていいわ」 「そりゃそうだが、俺がルイズに手を貸してたのは別に使い魔だからじゃあないからな」 「じゃ、じゃあなんだって言うのよ?」 意外な返事を聞いたルイズが動揺している姿を見れば、少しはポルナレフも気分がよくなったかもしれない。 けれど、実際はそれを邪魔するようなタイミングで、隙をみせたマジシャンズ・レッドの腕を取ったジョルノが、普通の人間だったら腕をへし折られかねないやり方でマジシャンズ・レッドを倒そうとする。 「ん? チッ、ルイズ。話は後だ。俺はあのクソガキに年季の差を見せ付けてやらなきゃならねぇ。生身だから手加減してやれば調子に乗りやがって」 「ちょ、ちょっと…! …答えなさいよ」 ルイズが声をかけてもマジシャンズ・レッドのコントロールに集中し始めたポルナレフの耳には届かなかった。 アンリエッタのことを相談しようか考えていた事など忘れて、ルイズはないがしろにされた怒りに任せてその場から離れていく。 ポルナレフが気付いた時には、ルイズの姿はもう女子寮の方へ消えていた。